「役と過ごす時間」 ますだゆみ

ふぁんハウスでは通常、ひとつの作品を
冬と夏、年2回公演します。
なので、頂いた役とは1年近く共に過ごし
時間をかけて向かい合う事が出来ます。

昔、ふぁんハウスに入って間もない頃は
「時間を置いて、同じ役を演じる」経験がなかったので
セリフを忘れてしまわないか、
動きは覚えているだろうか
初演と同じ感情で演じられるだろうか等
色々な思いと共に、その「初体験」を
自分なりに検証しながらの公演でした。

実際、やってみると・・・。
読み合わせをしていくうちにセリフが自然と出てきて
動きもほぼ覚えているし、
湧いてくる気持ちが同じだったり
逆に、以前は感じなかった新しい気持ちを感じたり
同じ作品でも「なぞるのではない」
新しい作品として取り組む面白さを感じました。

そして、先日9月7日に行った「ふたりのゆめ 綾部公演」
これは2024年1月に初演・2024年7月に再演した作品の
三度目の上演でした。

私の演じた「三浦知世」は、昔、一度だけ頂点に立った演歌歌手。
でも、その後はヒット曲に恵まれず
今は高級有料老人ホームでひっそり暮らす孤独な女性
周りの人とも距離を置きながら、ただその日を過ごしているだけ。
さて、どんなキャラクターとして演じたらよいか、
初演の時は手も足も出ず、あっちの方向、こっちの方向と
行ったり来たり、試行錯誤の連続でした。
最終的に答えが出せたのかどうか?わかりませんが
再演では初演と少し違うキャラクターになっていて
自分としてはやり残した悔しさを持ちつつ終えた
初演と再演の舞台でした。

その後、今年2025年4月に公演したのは「夏の夜空へ」
この時の役柄は、寂れた温泉宿の女将さん
まるでやる気のない、フツーのおばちゃんです。
自分としては得意とする発散型キャラクターだったので
楽しんで演じる事が出来ました。

そんな楽しい役柄を経て、今年9月、三たびの「ふたりのゆめ」
久しぶりに再会した「三浦知世」さん
果たして、自分の中にはどんな知世が残っているのか

今回は、他のキャストも大きく変わり、
そのおかげもあって、すんなり知世が戻ってきました。
「ああ、知世はこの時こんな気持ちだったんだ」
「言葉ではこう言ってるけど、ほんとはこう思ってたのか」
そんな発見もありました。
時間を置いて、一度自分から抜いたはずの役だけど
それでも残っていた一番底にある思い。
そこを頼りに役作りをしていくうち、
やっと知世に近づけた気がします。
結果、約2年。知世と向き合い、演じる事が出来た事は
私にとって大きな経験であり、喜びとなりました。

さて、もう少し知世さんと一緒にいたいところですが
ふぁんハウスは次回公演へ向けて動き出しています。
年明け1月23日〜25日は、六本木にある麻布区民センターにて
今年4月に行った「夏の夜空へ」の再演です。
間に別の作品、それも大きな経験をはさんでの再演。
これも私にとっては初体験です。
今度はどんな感情が出てくるのか楽しみと同時に
少しでも成長し、味のある女将を演じたいと思います。
是非、お時間がありましたら、
2026年1月は麻布区民センターまで
足をお運びください(^^)/


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