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団長の独り言 2021.07.17-6

「皆さんのおかげです!どうもありがとう!」

昨日以上にお客様の笑い声が
お芝居全体の雰囲気を盛り上げて下さる。

しかし・・・
そこでいい気分になった役者が余計な間をとり、
テンポが微妙に狂い始め、ハラハラドキドキ・・・。

その事に気付いた何名かの役者達の
奮闘努力により、芝居が大きく崩れる事もなく、
なんとかエンディングまで持ち堪えた。

フィナーレでの客席の反応もすこぶる良くて、
皆さんが温かい手拍子を下さり、
笑顔の華が客席中に咲く。

最後のエンディングで曲に合わせて
千秋ちゃんがお客様へご挨拶をするのだが、
彼女にしては珍しく感極まって
声を詰まらせている。

あとで聞いた話だが、
このコロナ禍の中、やり遂げた安堵感とか、
お客様の温かい拍手が彼女を感極まらせたそうだ。

そしてアマティーと美和の演奏を終え、
最後の私のご挨拶となる。

前回の冬公演では、
コロナに振り回され続けての公演だっただけに、
初日も楽日も両日舞台挨拶の時、
涙で声を詰まらせてしまったのだが、

今回は
「明るく、笑顔でご挨拶をしよう!」
って心に誓っていたので、
相変わらずの平野恒雄節で、
場内を沸かせていたのに・・・

一間置いて、
「昨年の夏、ここ板橋区立文化会館で
このクリーンキーパーを上演する予定で準備を
進めてきたのですが・・・中止・・・」

とここまで言うと、
あの時の悔しさとか色々な事を乗り越え、
公演開催までの道のりとかがフッと頭の中に現れ、

さらには昨年の夏、板橋で上演出来なかった
「ざ・クリーンキーパー」が、
板橋区の関係者の皆様のお力添えのおかげで、
今回は無事板橋で行えたという感謝の気持ちとか、
嬉しさとかが込み上げてきて、
そのうえ、お客様の温かい拍手までいただき、
もうダメ・・・60歳近い大人が皆さんの前で号泣。

トホホホ・・・

そんな声を詰まらせて号泣している私に、
客席から「応援してるよぉー!」って
声援を送って下さる方が!
ありがたいやら嬉しいやら・・・
でもどこかで聞いた事のある声だぞ?

実はその声の主は、
劇団ふぁんハウスで数年間看板女優として
大活躍してくれた佐藤睦子さんだったのだ。

睦子さんは事情があり、
劇団ふぁんハウスのステージから
一時的に離れてしまったけれど、
この日はお姉さまと一緒に観に来てくれた。

これも後日談だけど、
お礼の連絡を睦子さんにした際、
睦子さんが言ってたけど、
「この時期だしね、大向こうは禁止なのは
分かっているんだけど、なんだか団長が泣いているし、
気が付いたら叫んでいたのよねー」との事。

昨年の板橋公演が出来るか出来ないか
の話し合いをした時は、
睦子さんもキャストとして
議論に参加をしいていただけに、
彼女の中でも、
「ざ・クリーンキーパー板橋公演」というのは、
特別な想いがあったのだと思う。

その睦子さんの声援に励まされ、
(その時は睦子さんだとは思わなかったけど)
なんとか無事ご挨拶も出来て、
晴れ晴れしい気持ちで、
約1年間に渡って関わってきた
「ざ・クリーンキーパー」の幕を無事下ろす事が
出来たのでした。

お客様へのお見送りの際も
(もちろんソーシャルディスタンスと
マスク姿で感染予防バッチリ)
とても温かい笑顔を頂戴して成功を実感。

いつまでも余韻に浸りたいところだが、
そうもいかない。

余韻を一旦横に置いておいて、
舞台セットのばらし作業や楽屋回りの
片付け&清掃等が待っている。

みんなで手分けしてガンガンと作業を進め、
3時間くらいかかったばらし作業を終え、
荷物をトラックに積み込み一息ついていると、
照明の六工房さん軍団が集まっていたので、

「次回は2月12日(土)赤坂ですから!
頼みますねぇ!」

って、営業の松本さんや今回もお世話になった
オペレーターの土門さんに挨拶をしていると、
六工房軍団の皆さんの顏が何故か曇っている。

どうしたのかなぁ?と思っていると、
土門さんが「実は・・・あの・・・」
と言ってきたので、何事か?と思いきや、
なんと!土門さん退職されるという。

他の照明会社に行くとか
独立するとかではなく、
完全にこの仕事から身をひくとの事。

いやぁー本当に驚いた。
思い起こせば土門さんとの出会いは、
2007年に上演した「夏の夜空へ」の時。

当時の土門さんはまだ下っ端で、
いつも「おい!どもぉーん!」
「おーい!どもぉーん」って、
先輩方にあちらこちらから厳しく叫ばれながら、
テキパキ働いていた。

その土門さんも、
やがてオペレーターとして劇団ふぁんハウスに
関わってくれるようになり、
今では「平野組」の一員として
大活躍してくれていただけに、
土門さんの引退は相当応えるが、
これも土門さんの人生。

彼は
「最後の仕事が劇団ふぁんハウスで
本当に良かったです」

と言ってくれた。

土門さんと涙、涙の固い握手を交わし、
我々は劇場をあとに劇団倉庫へと向かい、
トラック満載の荷物を倉庫にしまい込み、
劇団ふぁんハウス39回公演
「ざ・クリーンキーパー」は無事、
幕を下ろす事が出来たのでした。

今回も本当に、
最後の最後までコロナに振り回され続けたけれど、
感染者も出さず、無事に公演を終える事が
出来たのは奇跡だと思っている。

いま、なんとなく世の中オリンピックに乗っかり、
御祭り気分で「コロナ」は後回しって感じで、
どんどん感染者が増えている。
この分だとまだまだ感染者を減少させるのは
難しいと思うが・・・

どうか、どうか演劇が普通に
行える世の中に戻ってくれる事を願いつつ、
私は前を向いて、
新作の執筆作業に取り掛かるのでした。

今回も応援して下さった皆様、ご協力下さった皆様、
そしてご来場下さった多くのお客様!
本当に本当にありがとうございました。

これからも、
劇団ふぁんハウスをどうぞ御贔屓に!!

劇団ふぁんハウス代表
       平野恒雄


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