Page19–「初日」
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団長の独り言 2024.7.20-4
7月20日(土) 「初日」
朝5時30分起床。
予定起床時刻の1時間前・・・。
昨日の仕込みでは、
丸1日動き回っていて、
身も心もヘロヘロで、
結構疲れたはずなのに、
気が昂っているんだろね。
劇団ふぁんハウス創立26年、
今回で45回公演なんだけど、
何度経験しても初日ってのは、
そりゃーもう緊張する。
身支度を整え、家で奉っている
明治神宮の神様に手を合わせ、
神様を丁重に箱の中に入れ、
午前7時10分いざ出陣!
早朝からムッとする暑さだけど、
まぁー晴れ渡る青空だし、
それもまた良し!
美鶴さんと共に車に乗り込み、
ナビの「オーディオ」を操作して
ハウンドドッグのフォルティシモ
をかける。
聞きなれたイントロが流れ出す。
体中のアドレナリンが出てきて、
「おっしゃぁ~」って気持ちになる。
この儀式?を始めたのは、
第1回公演
「風に吹かれて」の初日の時。
この曲を流しながら(爆音で)、
劇場に向かうと、
めちゃめちゃ精神統一出来て、
大成功を収めたので、
それ以来、初日の朝、
劇場に向かう車中では、
必ずフォルティシモを聴く。
「激しく 昂る 夢を眠らせるな!
溢れる想いを諦めはしない」
ここのフレーズになると体中が震える。
劇団ふぁんハウススピリッツそのもの。
土曜日の朝の都内の道路って、
意外と渋滞が激しいものなので、
この日も、かなり時間に余裕をもって
家を出るがフォルティシモの軽快な音楽に
合わせるかのように、すいすいと車は進み、
集合時間の9時00分よりも
1時間以上早い8時前には
劇場に到着してしまう。
いくら初日の朝だからって、
気合を入れすぎた・・・。
劇場の開門時間となる
8時50分までの間、
劇場近くにある「喫茶・能舞台」という
喫茶店にて朝食をいただく。
お店は昭和レトロ満載。
なにせ店内のどこの席でも
「タバコ」オッケーなんだからね。
私はたばこは吸わないので、
正直たばこオッケーのお店はなぁ・・
ってのもあるけれど、
早朝から営業している喫茶店ってのは
ここしかないので、音声ガイド操作を
担当する妻の美鶴さんと共に入店。
なんとなく薄暗い店内には、
年配で常連客っぽい方々が何組かいて、
新聞を読む人、マスターと競馬の話で
盛り上がっている人、読書する人等で
そこそこ混んではいた。
面白いのが、たばこのヤニで
茶色く変色している張り紙に、
「たばこは3本まででお願いします」
という張り紙が貼ってあるのには、
「さすが昭和の喫茶店」
って感じで、なかなかおもろい。
暫くしたら、
70代前半くらいのマスターが
コーヒーやらトーストやらを
運んできてくれた。
味はグッド!
こちらで開門時間までの間、
のんびりとさせていただき、
とっても贅沢な時間を過ごし、
いざ劇場へ。
入口の前には、
すでに役者、関係者全員が揃っていて、
皆さんと挨拶を交わしていると
8時50分、開門時間となったので、
みなと共に楽屋へ向かう。
9時30分。
「ふたりのゆめ」の関係者一同が
(役者・全てのスタッフ)
が舞台上に集合。
毎回恒例の「成功祈願」を行う。
明治神宮のお札(おふだ)の入った
コンパクトサイズのお社を舞台中央に設置し、
その神様を皆が取り囲むように整列。
まずは私の挨拶から。
皆が整列している真ん中に立ち、
挨拶を行う。
ずらりと並ぶ関係者達に
欠席、遅刻、けが人、
体調不良は誰一人としていない。
その「当たり前」のようで、
役者陣、スタッフ陣全員が欠ける事なく、
こうして初日を迎える事が出来るのは
奇跡なんだ!
というような事を言おうとすると、
あれ?俺はどうしたんだ?
いつもはユーモア交じりの挨拶をするのに、
突然、感極まってしまい、
言葉が詰まってまともに挨拶が出来ない。
設立してから26年、45回目の公演、
過去に沢山色々な辛い事、苦しい事があった事、
それを乗り越えてここまで来た事・・・
そんな事が思い出されてしまったのと、
これは後日ちゃんとお伝えするが、
実は私は、この公演を終えた8月に、
肩の手術をする事となり、術後入院して、
退院してからも、
リハビリを半年以上行うという生活を
送る予定となっている。
そんな怪我を抱えていたので、
稽古期間中はもちろん、
今回の搬入、仕込みから
芝居を行っている最中も、
つねに肩の痛みを抱えながら、
なんとかここまでこられたので、
その・・・なんだろうか?
「健康であることのありがたさ」
を実感していての初日に、
全員が健康な姿で集まってくれた事が
とっても嬉しく思い、
つい涙ぐんでしまったってのも
あるかもしれない。
これまで、千穐楽が終わってからとか、
あとはコロナ禍での公演の初日終了後の
舞台挨拶では感極まってしまった事は
あったけれど、
朝の成功祈願の挨拶で、
こんな事になるのは初めて。
みんなは「団長どうしたの?」って
感じだったけれど、それだけ私も
涙もろくなったって事で、
気持ちを切り替え、
昨日の場当たりの続きを開始したのでした。