Page24 –「久美・美容室物語」その5

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団長の独り言 2022.02.12(その5)

「久美・美容室物語」その5

ゲネプロというのは
リハーサルの事なんだけど、今回のゲネプロは、
いつものゲネと違って公開ゲネプロ!

つまりお客様がお越しになっての
リハーサルとなる・・・という事は、
事実上の本番初日って事。

今回も観客数を定員の半分までとしているので、
どうしても観劇出来ないお客様が出てしまう。

そこで、一人でも多くの方に御覧いただくべく、
港区在住・在勤・在学の方限定でリハーサルを
御覧いただく事になった。
(この公演は
特別共催・
公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団。
令和3年度港区文化芸術活動サポート事業)

つまりゲネプロだけど本番。
だから例の「スクリーン問題」で、
芝居や動きのタイミング等が急きょ変更になった
シーンも全てぶっつけ本番。

このシーンでは、
芝居の途中で中割幕という幕が閉まる事になったので、
役者は芝居をしながらさりげなく幕の前に出るという・・・
これまでとは全然違った動きをしなきゃいけなくなった。

普段ならそれらの動きの変更等も、
ゲネプロで確認する事が出来たのだが、
いきなり事実上の本番なのでちょっと不安。

いや!場当たりでキチンと確認したのだし
大丈夫!大丈夫!
と・・・想いながらも、みなの心はどこか
やっぱり少し不安はあるようで、
いつになく静かな休憩時間を過ごし、
メイクをして衣裳を着て、
ゲネプロ開始を待って各々が
思い思いの時間を過ごしていた。

午前11時45分、
公開ゲネプロにお越しのお客様の入場開始。

いつもならゲネプロ開始ギリギリの
この時間までは緞帳幕が開いているので、
ステージ上では役者達が発声練習をしたり、
動きの確認作業をしたりと、
どこかリラックスした
空気が劇場全体に流れているのが、
お客様がお越しになっての「公開ゲネプロ」なので、
発声や動き確認は、緞帳幕の中でひっそりと行う。

ただこの公開ゲネプロ、
事実上の本番だけど本番と明らかに違うのは、
後方の客席内から記録・宣伝用のスチール写真を
撮影する大きなカメラが2台三脚の上に乗り、
舞台を狙っているところ。

いつもはこのゲネプロの時に、
劇団関係者が一眼レフカメラを構えて
客席を動き回り、あっちでガシャガシャ!
こっちでガシャガシャと撮影しているのだが、
今回はゲネプロとはいえども、
お客様が御覧になるので、
縦横無尽に関係者がカメラを構えて動き回るって事は
出来ない。

撮影を行う場所は客席の後方限定となるので、
動きある写真を撮るとなると、
腕がなきゃなかなか難しい。

それよりなにより、
今回は写真撮影を行える劇団関係者がいない・・・・。
困ったなぁ・・・と思っていたら、
なんとプロのカメラマンであるメンバーのお兄様が
ボランティアとして一役を担って下さると
おっしゃって下さった。
大変ありがたい!

ゲネプロ開始が
「12時なので、
それまでにお越しいただければ大丈夫です。」

とお伝えしていたのだがプロは違う!

「照明の具合を見ておきたいので」
との事で、この日は朝9時の劇場入りの
時間には超大きなカメラ2台と、
超大きな三脚2脚と、
あと色々な商売道具の入ったケースをご持参で
お越しになり、ゲネプロの写真を
撮って下さったのだ。

ゲネプロ開始5分前、
まずは緞帳幕前に私が登場。

「本番とまったく同じだけど
スチール撮りのカメラが後方で構えていて、
多少シャッターの音が気になるかもしれませんが、
ご了承ください。」
という事をお客様に伝えようと思って、
舞台袖でスタンバイしていると、
舞台監督の高橋さんがインカム越しに、
「まもなく団長が登場します」
と伝えていて、私がタイミングを見て
「行きます」と言うと、
どなたかが緞帳幕を端を手で開けて、
私が出やすいようにしてくれて、
そのタイミングで高橋さんは
「団長出ます!」とまたインカムで、
照明さん、音響さんに合図を送る。

そしてこの私めが
登場するんだけなんだけど、
高橋さんが指示を出す様子が
妙にカッコいい!!!

私は大スタ─か何かになった気分!
なーんて思いながらも、
ひょこひょこ舞台前に出ると、
照明さんがピンスポットをあててくれて、
音響さんがマイクのレベルを上げてくれる。

役の人物としての登場ならば、
ピンスポットがあたろうが、
マイクのレベルがあがろうが
緊張なんてそれほどしないのに、
素の自分が
こうしてお客様を前に登場するってのは、
まぁーガチガチ状態・・・。

お客様は「何が始まるんだ?」
って顔で私を見つめるし、
緊張しすぎてオドオドドギマギ・・・
何を言ってんだか、
支離滅裂の事を言った記憶はあるが、
実は内容そのものはあまり覚えていない。

かっこよくやるつもりが、
はぁ〜
なんか俺なんて出るんじゃなかったぁ〜と
落ち込みながら袖に引っ込みむと、
まり恵(萱場まり恵)さんがいたので、

「どう?なんか変な事言ってなかった?」

と聞けば、彼女はとっても明るい笑顔で、

「大丈夫です!すごく良かったです!」

とクヨクヨした私を励ましてくれたので、
ちょいと救われたけれど、
やはり挨拶もキチンと計画的に
稽古しなきゃいかんよなぁーと思いながら、
いよいよゲネプロが始まったのでした。


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