Page15 –「謹賀新年。」

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団長の独り言 2024.1.1

1月1日(月)「謹賀新年」

明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い致します。

さて、
年末30日に稽古を行ったけれど
まだまだ・・・まだまだ・・・
劇団ふぁんハウスの本領を
発揮するまでには至らない状況だった。

そこで正月も三が日のどこか1日だけでもいいので、
稽古を行いたいところなのは山々なのだが、
三が日は劇団ふぁんハウスが
稽古場としている施設は
どこもかしこもお休みだし、
お正月に営業している民間の施設で、
予算内でお借りしようとすれば、
めちゃめちゃ狭いか、
(場所が)めちゃめちゃ遠いか・・・
って感じのところばかり。

そりゃぁ~ね・・・
そんなところででも、全く稽古をやらないよりも、
やったほうが多少は「まし」かもしれないが、
超狭いところでの稽古となると
本気の稽古は出来ないし
場面もかなり限られてしまうので、

それならば正月くらいはのんびりしてもらい、
来たるべく本稽古までに、
ダメを出された箇所を充分に研究をして
挑んでもらおうってことで、
2年ほど前からお正月の稽古ってのは
行わない事にしたので、
だからこそ年末最後の30日の稽古では、
いつも以上に細かく厳しく、
激しいダメを出させていただいた。

ダメ出しというのは、
出されるほど自信がなくなるし、
「じゃぁ~どうしろっていうんだよ!」
ってやけになる場合もあるし、
演出家から言われている事は分かるけれど、
ど-しても出来ない不甲斐ない自分に対して
落ち込みと悔しさが入り混じり、
笑顔を見せる余裕すらなくなる事もある。

そう言えばその昔、
「容赦のないダメ出しは役者の栄養剤、
厳しいダメをドンドン出してもらいたい。」
なんて言う方が劇団ふぁんハウスにいた。

その方は、学生時代に演劇サークルで、
「本気」でお芝居をされていたらしく、

「つねに演出家に議論を吹っ掛け、
時に飲み屋で取っ組み合いの喧嘩をし、
翌日の稽古はケロッとして
稽古をしたもんですわ。
芝居を創るってのは、
そういうものなんですよねぇ」

と豪語されていた。
私はそういうタイプの方は、
どちかと言えば苦手。

ダメ出しが栄養剤?
何をカッコつけてんですか?
って思う。

きっとその方は、
本気でダメを出されたことが
ないんじゃないかな?

だって容赦のないダメ出しが続くと、
本当に辛いもんですからねぇ。

大体、演出家にいちいち喰ってかかる度に
稽古が中断するわけで、他の役者達は、
その議論が終わるまで待たねばならない。

そういった演出家に喰ってかかるとか、
「でも・しかし・だって」を連発する人がいると、
稽古のテンポも崩れるし、稽古時間が削られるし、
稽古場自体の空気も悪くなる。

だから劇団ふぁんハウスでは、
基本的には
役者のやりたいようにやってもらう
「役者ファースト」で稽古を進め、
さらに私特有のサービス精神を出しつつ、
各役者の性格に合わせたダメを出し、
笑顔のある稽古場ってのを
心掛けてはいる。

しかし今回のように、
余裕のない時期に来たにもかかわらず、
いつまでたっても前に進まない稽古が続くと、
「笑顔で」とか、「役者ファースト」とか
言っている場合ではなくなるわけで、
覚悟を決めて役者と対峙する。

ただ厳しいダメ出しは、
先程描いたように役者にとっては
かなりキツイ。

場合によっては、完全に潰れてしまう
役者もいるかもしれないし、
モチベーションが下がってしまい、
何をどうすればいいのか、
全く分からなくなる
役者も出てくるかもしれない。

それでも

「この人ならば、
このダメ出しの意味を理解して、
必ずや乗り越えてくれる!」

との確信が持てるからこそ、
こちらも覚悟を決めて、
「あえて」厳しくダメを出し、
何度も何度も同じ場面を繰り返すと、
ある瞬間!変化するのです。

それは稽古場にいる、
その場面に出ていない
皆の雰囲気からも分かるので、
そんな時は、
稽古を注視している共演者達に
「どう?」って
聞いてみる事にしている。

すると必ず、
「良くなった!」
「思いがすごく伝わるようになった!」

との感想を言ってくれて、
その上で「なぜならば」という変化の理由も、
具体的に説明をしてくれるのはありがたい。

言われた本人は、
「えっ?これでいいの?」
「何が変わったの?」と、
思う事もあるみたいだけど、

演出家のみならず、
他のみんなの意見も聞く事で、
自分が思い込んでいたものがすーって落ちて、
肩の力が抜けた、ナチュラルなものが
どんどんと現れてくるのです。

年末、とても厳しくダメをだされた役者達は、
かなり悩み苦しむ年の瀬だっただろうけれど、

「今回もいけるぞ!」

と私の中では、
かなりの手応えを感じた
有意義な稽古でありました。

皆様、本年も
劇団ふぁんハウスを
よろしくお願い致します。


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