「本番まであと8日!」 福岡美佳

本番まで、あと1週間ほどとなりました。
この時期になると、稽古場の空気が少しだけ変わるように感じます。
相変わらず笑い声は絶えないのですが、
その奥に「もうすぐ本番だ」という静かな緊張感が、確かに漂っている気がします。

今回の『夏の夜空へ』は、去年4月に上演した作品の再演です。
劇団ふぁんハウスでは、一度上演した作品を半年ほど経て
再演することが多いのですが、その度に不思議な感覚を覚えます。
台詞や場面は知っているはずなのに、稽古を重ねるうちに
「あれ、こんな気持ちだったっけ?」と、
役が全く違う顔を見せてくることがあるのです。
初演から時間を重ねた「今の自分」が、この物語をどう受け取り、どう再構築するのか。
今回の稽古は、その答えを探す時間でもありました。

そして、『夏の夜空へ』のテーマは、「一生懸命」。
「コスパ」「タイパ」が重視され、要領よく、効率的に振る舞うことが良しとされる今の時代。
この作品の登場人物達は、どこかその流れに逆らうように、不器用なぐらい一生懸命です。
だからこそ今、この物語を届ける意味があるのではないか。
稽古を重ねながら、何度もそんなことを考えてきました。
劇場でこの作品をご覧いただき、
ほんの少しでも「明日をがんばる力」を持ち帰ってもらえたら、
これ以上嬉しいことはありません。

一方、麻布公演が近づくにつれて、少し寂しい気持ちも芽生えてきます。
稽古期間も含めると1年近く共に過ごしてきた
「山の上ゆかり」という役と、もうすぐお別れだからです。
稽古の度に「今日はここがうまくいった」
「今日は全然ダメだった」と一喜一憂し、
稽古がない日でも「ゆかりなら、こういう時どう思うだろう?」と、ふと考えてしまう。
気付けば役は、すっかり私の生活の一部になっていました。
毎回のことではありますが、それが終わってしまうと思うと、やはり少し切ない。
でも、その別れがあるからこそ、本番の一瞬一瞬が、より愛おしく感じられるのだと思います。

また、演劇は役者だけでは完成しません。
客席に誰かが座り、同じ時間を共有して下さって、初めて舞台は完成します。
1月23日~25日。劇場で皆さんと同じ空間を共有できることを、心から楽しみにしています。
再演だからこそ、初演をご覧になった方にも、初めての方にも、
それぞれ違う「何か」が残る舞台になるはずです。
この物語が、皆さんの記憶のどこかにそっと残ってくれたら…。
そんなことを思いながら稽古場に立っています。
劇場でお会いできたら嬉しいです。


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