Page27–「夢と希望と勇気と優しさと団長の独り言」(竹本和弘)

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団長の独り言 2024.3.26

「夢と希望と勇気と優しさと団長の独り言」 (竹本和弘)

平野恒雄の脚本、つまり平野作品には
真の人格、正体が話の後半まで
伏せられている人物が
ほぼいずれの作品にも登場します。

いい人に見えて
実はとんでもない悪人だった・・・
またその逆で悪人に見えて実は心ある
人物だったとか。

もっとも後者がほとんどなのですが。

そしてそのような登場人物が
ストーリーの鍵を握っています。

例えば第42回、第43回公演
「人生芸夢〜夢の通り道〜」においては、
団長平野恒雄が演じた中沢卓という
登場人物がこれに相当します。

話の前半では、
利益を上げるためには不要と思われる物、
不要と思われる者は容赦なく切り捨てる
冷酷な人物として描かれています。

ところが、
実はこの中沢卓は仲間を大切に思い、
周囲のあらゆる人たちへの思いやりを持った
とても心優しい人物なのです。

そのことが
話がラストに向かうに連れ、
徐々に見えてきます。

第44回公演、
次回の第45回公演の「ふたりのゆめ」では、
私竹本が演じる芸能事務所社長村川が
これに相当する人物です。

面倒くさいことは
すべて須藤あゆみ演じる
若手マネージャーの岸本に押しつける。

適当でちゃらいお調子者、
というような人物です。

しかし実は・・・。
前回第44回公演を
ご覧になっておられない方々のために
詳細はここまでにしておきますが、
後半以降、
この村川の真の人物像が見えてきます。

ストーリーに深く関わっている人物なのです。
役者としてとてもやりがいのある役です。

それ故に、その真の人格を
観客にどれだけ伝えることができるかが
演者である私竹本の技量にかかっています。

私の身体を通して、
真の村川をお伝えできるよう
次回45回公演に向け気持ちも
新たに稽古に臨もうと思っています。

さて、劇団ふぁんハウスのテーマは
夢・希望・勇気ですが、

もう一つ忘れてはいけないものが
平野作品の根底には流れています。

それは「優しさ」です。
人に対する優しさのみならず、
思い出の品、思い出の場所、故郷など、
形ある物、場所、そして歌、詩、音楽など
形のない物などにまでそれは及んでいます。

優しさに触れた時、
私たちは幸福を感じ、そしてまた自らが
優しい気持ちになれるのです。

夢・希望・勇気に加え、
優しさというとても大切なことを
平野作品は伝えようとしているのです。

夢、希望、勇気、そして優しさ、
それらを皆様にお届けできるよう
みんなで力を合わせて、
次回公演に臨みたいと思っています。

最後にちょっとした
エピソードをご紹介いたします。

本番直前の男性楽屋でのことです。
団長と私は化粧前を隣にしていました。
楽屋に入ると左が団長、その右が私でした。

メイクを終えたみんなは
本番前の短い時間を
それぞれの方法で過ごしています。

たまたま楽屋に
団長と私の二人しかいなかった
ごく短い時間がありました。

団長と私は化粧前に座っていました。
その時団長が溜息混じりに、
とても残念そうに、しかも
目線を落としてうつむき加減に

「そうかぁ・・・」
と独り言?をつぶやいたのです。

私はそれを聞いて心配になり、

「団長、どうかしましたか?」

と尋ねると、

団長はにこにこしながら

「いや、ちょっと
台詞の確認をしてたんですよ」

と。

その直後、
私たちは二人で顔を見合わせて
大笑いしました。

台詞の確認というのは、
単に字面を追うのではなく、
相手がいることを、
相手が話し手いることをイメージして
自らの台詞を発する、
ということなのです。

だから
とてもリアルだったのです。

改めて役者として
とても大切なことを
気づかされた瞬間でした。


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