Page6–「夢を大切に」
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団長の独り言 2024.5.12
5月12日(日) 「夢を大切に」
いつも行くガソリンスタンドに、
言っちゃ~なんだけど
覇気があるわけではなく、
さりとてぼんやり君でもない青年が、
1月頃から働いている。
愛想がいいわけでないし、
「俺はメカには強いんだぜ!」
「車やバイクが好きで好きで
たまんないっすっ!」
って感じでもなさそう。
ガソリンスタンドで働くスタッフさんって、
車やバイクが好きな人が多くて、
こちらが常連ともなると、バイクや
車の話題で盛り上がりもするのだが、
彼の場合、全くそんな話にも
乗ってこなさそうなので、
特に何か話をするわけでもなく、
また話しかけられる事もなく、
ただ淡々と給油をしてもらって、
カード決済をして、
挨拶をする程度だった。
それが先日の事、いつものように
店内に設置されている自動販売機の
「100円」の缶コーヒーを
購入しようとしたところ、
「物価の上昇に鑑み・・・
うんぬんかんぬんで、5月より
110円での販売となります・・・」
みたいな張り紙がしてあったので、
カード決済の時、
「とうとう100円じゃなくなるんだねぇ」
と、迂闊にも彼に話しかけてしまった!
どうせ無表情で「そうですかぁ~」
みたいな答えが返ってくるだろうなぁ~
と思いきや、
「うちの田舎では、
まだ100円とか、50円って
缶コーヒーもたくさんありますよ」
とハニカミながら答えてくれるじゃないか!
「田舎はどこなの?」
「高知です。」
「高知のどこ?」
「桂浜から車で2時間位の所です。」
「桂浜?龍馬の銅像が立っている?」
「そうです!」
目を輝かせる彼。
ただ桂浜から車で2時間と言われても、
ピンと来ない。
でもそんな言い方をするって事は、
街中ではないのだろうなぁ~と思い、
「山とか海とか、近くにあるんでしょ?」
と、せっかくだし話を振ってみると、
彼はすっかり土佐弁になり、
「うちの目の前が海で、
裏には山がありますきぃ~」
と嬉しそう。
へぇ~
こんな笑顔を見せるんだぁ~
と思いながら、
彼の話に耳を傾けていると、
突然、「僕、夢があるんです!」
と言うじゃないの!
歳の頃は、18歳か19歳くらいなか?
そんな年齢の若者が、奇をてらう事なく、
しっかり、はっきりと
「夢があるんです!」と言う。
62歳になろうとする私は、
彼の真っすぐな言葉が、
心にズバ~ンと刺さった。
「どんな夢があるの?」
「役者です!」
「劇団か何かに入っているの?」
「事務所に入って、毎週レッスン受けてます」
との事。
どこの事務所で、
どんなレッスンしているのか?
そこまでは聞かなかった。
だって、
そんなものもどうでもいいから。
彼はヒョロヒョロの身体に、
うつむき加減で声も小さく、
人をひきつけるオーラは、
残念ながら今のところ感じられないけれど、
「夢があります!」
と言い切る姿は清々しい。
私が昔何をやっていて、今、何をしているのか?
という話も一切しない。
私も彼くらいの頃、
「役者になるんです」って言ったら、
「俺も昔なぁ~
芸能界ってのに縁があってなぁ~」
なんて話をしてくるおじさんが結構いて、
でも、そのほとんどが「自慢話」にしか
聞こえなかった。
だからきっと彼からしてみたら、
私の役者人生を聞かされても、
「そうですかぁー」にしかならない。
私の事なんて今の彼には関係のない。
「今の想いを大切にしてな!」
なーんて説教じみた話もしないし、
する立場でもない。
彼はいま、自分で自分の道を歩んでいるし、
私も「夢」に向かっている真っ最中なので、
彼とは私は言わばライバル。
「俺も負けへんよ!」
と心の中でつぶやきながら、
ガソリンスタンドを後にした。
私が役者を目指して、大阪府枚方市から
東京に出て来たのが18歳の春。
何度も悔しい想いをしてきたし、
生活が出来なくなるくらい
苦しい時期も何度も経験してきた。
あの頃は「夢」しかなかったけれど、
それでも「夢」だけはあった。
やがて私は、
第一線でのプロの世界を
経験させていただく事が出来るようになり、
「役者」で喰っていけるようにもなった。
しかし色々な事情が重なり、
「プロの役者」の世界から、
「とりあえず」身を引いたのが約28年前・・・。
それなのに、気がつけば、
今でもちゃんと芝居を続けていて、
劇団ふぁんハウスは、
今年で26年目になる。
劇団運営、脚本の執筆、仕事との両立・・・
人間関係、その他諸々・・・。
めちゃめちゃキツイなぁ~って
思う事は毎度の事。
それでも、ずーっとやってこれたのは、
劇団ふぁんハウスのお芝居を
楽しみにして下さっている
大勢のお客様がいらっしゃるから。
綺麗ごとのような決まり文句だけど、
これはね、本当にそう思っている。
あとはなんと言っても、こんな私の元に
「一緒にお芝居がしたい!」
ということで、集まってくれる
メンバー達がいてくれるから。
これからも
「夢」に向かって走り続けてやる!って、
気合を入れ直した団長でありました。


