Page20–「場当たりが終わり、 ゲネプロに向かうまで。 」

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団長の独り言 2024.7.20-5

7月20日(土)
「場当たりが終わり、
ゲネプロに向かうまで。」

初日の午前中、場当たりは続く。
「見える人」の役を
演じる全盲のメンバー竹本は、
勘が良いい上に度胸もあるが、
それでも場当たりでは
何度も何度も動きの確認作業を行う。

芝居をしながらある程度の距離を歩き、
時に椅子に座り、時にはギターを弾き、
歌いながら登場する。

それらの動作を、
見えていない役者が、
見える人として演じるのは、
実はとても大変な事。

そのため、今回も稽古中から
本番を想定しながら竹本の意見を聞きつつ、
何度も何度も稽古を行ってきて、
稽古場ではバッチリ出来るように
なってはいたが、

いざ実際の舞台セットを使っての芝居となると、
稽古場の部屋と劇場という空間とでは、
距離はもちろんの事、環境もまるで違うわけで、
しかも歩いて向かう角度も微妙も違い、
そう簡単にはいかない。

それでも神経を研ぎ澄まし、
歩数や共演者とのコンビネーションで
バシッ!と決めて行く。

ちなみに場面転換の時も
暗転になるとは言えども、
前列付近にお座りのお客様からは
役者が退場する姿が微妙に見えるので、
劇中でなくとも、舞台の袖に行くまで
竹本は「見える人」として、堂々と退場する。

他でも役者の出ハケ(登場、退場)は、
稽古場とまるで違う環境なので、
戸惑うメンバーがちらほら出る。

稽古場では、「暗転でーす」というものの、
実際に暗くなるわけではない
「明るい稽古場」での移動なので、
普通に出来るのだが、
いざ舞台セットが立ち並ぶステージで、
「暗転でーす」の掛け声もなく、
暗くなるとどうしたものか?
メンバー達はプチパニック。

みんな初舞台じゃないのだから、
暗転がどんなものか
理解はしているはずなのに、
目の前がいきなり暗くなると、
どこからはけたら(退場したら)いいのか
分からなくなり、暗闇の舞台上では
役者が右往左往。

すると、場面転換のため袖から出てくる
デスクを運ぶスタッフと
役者がぶつかってしまう。

この時点で高橋さんが、
「はい、とめまーす」
という掛け声をかけると、
舞台上は「作業明かり」というものが点く。

「みえなかったぁ~」
「セットの角が、
暗くなると分からないので、
蓄光テープを貼ってもらえますか?」
「袖がどこか分かるようにお願いします」

と、まぁ~皆さん好き放題に注文する。

その「好き放題」な役者の要求にも、
嫌な顔ひとつせず対応している高橋さん。
観るに見かねた私は、役者達にお説教。

「なんでもかんでも、
スタッフさんにお願いすれば
いいってもんじゃないから!
役者は役者で『慣れる努力』もしなきゃ!」

確かに、眩しいライトを浴びて
舞台上に立っていて突然暗くなると、
目が暗闇に慣れていないものだから、
まるで見えなくなるけれど、
舞台セットが建った時点で
確認していればいい話だし、
ただでさえ、場当たりというのは
時間との勝負。

どーしても暗転中にはける(退場する)のが
難しい場合は、それはスタッフさんの
協力を得なければならないが、
基本的に場当たりというのは、
スタッフさん達のためにあるのだから、
役者はそのスタッフさんの調整を
円滑に進める協力をしなきゃ
いけないと私は思っている。
だから役者が舞台監督さんに向かって
「こーしてください」
「あーしてください」と、
進行を妨げてまで言うのは違う。

「役者がまごついているな」とか、
「蓄光を貼ってあげなきゃ」とかは、
ちゃんと舞台監督が見ているわけで、
どうしても、厳しいようならば、
考えてくれる。
高橋さんはそういう事の出来る人。
だからこそ、役者陣も、
極力、自分達で暗転中の移動が出来る
努力をしなきゃいけない。

その後、大きな問題もなく場当たりは進み、
予定通りの午前11時に終了。

1時間後に開始される「ゲネプロ」に向け、
みなが準備に入る。

場当たりの時は、
衣裳の早替えの確認をしたい役者以外は、
基本的にジャージやTシャツでもオッケーだし、
メイクもしなくてもいいという事に
しているが、ゲネプロでは、
「衣裳もメイクも本番と同じ」
にしてもらわねばならない。

それは、
メイク&衣裳に実際の照明があたると、
客席からどのように観えるのか?を
キチンとチェックしたいから。

だから当然、
男性もちゃーんとメイクします。

まぁ~そんなわけで、場当たりが終わった後は、
役者陣は約1時間後に迫った「ゲネプロ」に向けて、
メイク、衣裳をバッチリ決めなければならないので
もぉ~バタバタ。

かなり慌ただしいが、
それでも早めに準備を終えた役者は、
差し入れにいただいた楽屋見舞いの
お菓子をつまみ、
持参してきた昼食を摂り、緊張をほぐす。

バタバタの中にも緊張感が増し、
ゲネプロが始まったのでした。


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