Page10–「舞台転換の重要性」
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団長の独り言 2025.08.17
8月17日(日)「舞台転換の重要性」
今週から、舞台転換も
本番通りとした
通し稽古を行っている。
今回は、2名の舞台スタッフが
専属で付く事になっているのだが、
場面転換の多い
劇団ふぁんハウスの芝居では、
2名だけではとてもではないが
スムーズな転換は難しく、
今回も役者が場面に応じ、
役者として芝居に集中しつつも、
場面転換では気持ちを切り替え、
転換スタッフとなり、作業を行っている。
この場面転換の時というのは、
特殊な演出でもない限り
舞台上が真っ暗になる。
そんな中音も立てず、しかも素早く
的確に作業を行わねばならないので、
慣れていないと本当に焦ってしまう。
だからこそ稽古場では、
「誰が」「何を」「どうするか?」
を綿密に打ち合わせて、
何度も何度も繰り返し、
確実に転換が出来るように稽古する。
この「誰が」「何を」が少しでも狂うと、
ないはずの物がその場に残ってしまったり、
あるはずの物が
出ていなったりという事が起こる。
そうなると、
いくら役者が名演技をしても
芝居はぶち壊れてしまうので、
稽古時間をかなり割き、
納得するまで転換稽古を繰り返し、
「よし!これで大丈夫」
と思っていざ劇場へ向かうのだ。
ここで初めて
舞台セットを使っての
転換を行うのだが、
あれだけ稽古場でやっても、
稽古場と劇場との感覚のあまりの違いに、
最初は
なかなかスムーズにはいかないもの。
その「舞台の怖さ」を
よく知っている舞台監督の高橋さんが、
次回の稽古から参加してくれるので、
我々が「完璧」と思い込んでいる
稽古場での転換でも、
恐らく不備を指摘してくれるはず。
高橋さん、よろしくお願いしますね。
劇団ふぁんハウスは
今回で47回目の公演となるのだが、
残念ながら「転換ミス」の経験はある。
その中で、
凄まじく印象に残っている
「転換ミス」といえば、
2005年に上演した、
第10回公演「新・カーテンコール」
という舞台だろうなぁ。
この作品の舞台セットを考案したのは、
当時、イギリスの大学で
舞台美術を学んでいた
日本人の学生さんで、
我々の作品が彼女にとって、
舞台美術家としての
デビュー作品であった。
だから
彼女は相当気合が入っていたし、
やる気に満ち溢れていたのだが、
からくり仕掛けのある複雑な造りで、
おまけに道具を造った人も、
専門家ではない大工仕事が得意な素人さん。
「大丈夫かな?」と思いつつも劇場入り。
立ち上がった実際の舞台セットを観ても、
なんとなく不安定な気がするが、
「こんなもんか・・・」と思いつつ、
「場当たり」で、からくり仕掛けを
動かしての転換を行えば、
運よくか運悪くか?
一発で上手くいったので、
どこかで油断をしてしまい、
いざ本番を迎えてた。
すると、
「居酒屋」から「事務所」に転換する際、
事故は起きてしまった。
大きなパネルの上半分を下に降ろすと、
そこにカウンターが出て来て、
パネルの上半分の開いた後ろには、
お品書きが貼ってある別のパネルが
あるという「居酒屋」。
その「居酒屋」を事務所に変身させるには、
下に降りているパネルを、
カウンターごと「よいしょ!」と持ち上げ、
上のほうにある
金具で固定してパネルを閉じると、
「事務所の壁」の出来上がり!
と・・・なる予定だったのが、
持ち上げたカウンターの重さに
パネルが耐えきれず、
本番中、セットにゆがみが生じ、
固定金具の位置がズレてしまい、
パネルを固定する事も出来ず、
暗転中の短時間では、
どうする事も出来ないまま、
明かりが入ってしまう。
当然、明かりが入れば芝居は始まる。
その結果、舞台前はデスク、事務椅子、
ホワイトボードが並んだ「事務所」なのに、
後ろのパネルは居酒屋のままという状態。
幸い?役者達は、
前(客席)を向いて芝居を行っていたので、
後ろが居酒屋のままってことは
全く気が付かず、動揺しないで
「事務所」の芝居を行っていたため、
何事もなく進行していたのが、
お客様からしてみたら、
事務所のシーンのはずなのに、
後ろは居酒屋?という状態で
御覧になっていたのだ。
「なんとかしなきゃ!」と思い、
「事務所にある居酒屋カウンター」
を正当化するため、
本来、私演じる「社長」が
「木枯し紋次郎」のテーマを歌いながら、
舞台袖から登場する予定だったのを、
カウンターの下に潜り込み、
そこで歌を歌い始め、
登場と共にカウンターの上に飛び乗って、
そこをステージに見立てて、
「どこかでだれかがぁ~♪」を
大袈裟に踊り、そして朗々と歌うという
芝居に変更した。
お客様には、
「カウンターがステージになるから、
居酒屋だけど事務所なのね」と、
無理やり納得していただいた。
その後、
ちょうど休憩となったので、
応急処置を施して、
セットの転換をなくして、
事なき?を得たのだが、
舞台転換というものを
甘く見ると大変な事になるというを
再確認した。
今日の稽古でも、昼間は
衣裳を身に着けての「通し稽古」を行い、
(もちろん!転換もあります)
夜の稽古では、ダメを出した役者の
抜き稽古もそこそこに、
「転換」をメインにしての
抜き稽古を徹底的に行った。
因みに、
その大ミスをした公演の次からは、
プロの専門家にデザインをお願いし、
プロの専門家に
大道具を創っていただくようにしたので、
それ以来、道具が絡む転換ミスというのは
皆無となっている。
これは後日談だけど、
そのイギリスの学生さんから、
公演終了後、
もらったメールにはこう書かれていた。
「いつも私が部屋で作っていたのは、
【舞台セットの模型】ではなく、
【模型の舞台セット】だったという事に
気づかされました・・・」と。
彼女もすごく勉強になったと思う。
今、どうしているのかなぁ?


