Page16–「綾部公演成功までの軌跡・・・その4」
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団長の独り言 2025.09.05-④
「綾部公演成功までの軌跡・・・その4」
9月7日(日)本番当日の朝、快晴。
8時30分、宿舎前に
「演劇まちづくりの会」の藤岡さん、
今川さんがお迎えに来てくだり、
笑顔でご挨拶を済ませ、
ホテル・チーム約10名は2台の車に分乗し、
いざ!中丹文化会館へ。
ほぼ同時刻に、
他の2つの宿からのメンバー達も
続々とやってくる。
「演劇まちづくりの会」の皆様と
我々劇団メンバーは、
中丹文化会館玄関前に設立されている
元京都府知事、元参議院議員の
林田悠紀夫先生の銅像の前に集まり、
まずは四方源太郎顧問のご挨拶、
そして私の挨拶と続き、
今川信吾さん(イマリン)の掛け声とともに、
全員で「がんばろ~」三唱を行う。
足は肩幅に広げ、左足は半歩前に出し、
左手は腰に添えて右手にこぶしを作って、
天高くこぶしを突き上げながら
「がんばろ~」
とみなで声をあげるのだが、
劇団ふぁんハウスの
「いち、にー、さん。だぁ~」
みたいなもので、
みんなで気持ちをひとつにするという
気合入れの儀式。
実はこの「気合入れ」、
数十年前、中村敦夫さんの参議院議員選挙の時も、
選挙事務所で行ったことがあり、
政治家の方や企業でもよくやられている。
団結力が高まり劇場入りすると、
成功祈願を執り行っていただく
高倉神社の宮司さんが
すでに到着されていて、
ステージ上では、お社からお供え物など
本格的な「祈祷」の準備が整っている。
劇団ふぁんハウス東京公演での初日も、
舞台セットに明治神宮のお札(おふだ)
の入ったお社を置き、
メンバーが「にわか神主」となって、
祝詞を唱える「成功祈願」は行ってはいるが、
綾部公演では、中丹文化会館に一番近い
高倉神社から宮司さんに来ていただき、
祝詞を唱えていただくという
とてもありがたい成功祈願を
執り行っていただく。
装束をお召になられた宮司さんを中心に、
みなが祭壇に向かい、
宮司さんの祝詞が始まると全員首を垂れる。
その祝詞、劇団ふぁんハウスのことを
よく調べていただいていて、
メンバー達は祝詞に感動し誰もが涙ぐむ。
続いて「玉串奉納」。
劇団からは私、平野恒雄と舞台監督の高橋哲彦さん、
演劇まちづくりの会からは、
四方源太郎顧問と小嶋匠リーダーが各代表として
玉串を捧げる。
「では、まず平野代表からお願いいたします」
と宮司さん。
えっ!一番最初?しまった!
事前に玉串奉納の事は聞いてはいたが、
うかつにも「奉納の仕方」を勉強していない。
身内だけとはいえども、ここは代表として
ビシッと決めたいところ。
先ほど
宮司さんが行った作法を思い出しながら、
両手で玉串を取り、榊の枝を神様に
向けた状態に回転をさせて奉納し、
深々と首を垂れ、一心不乱に「大成功」を祈る。
私の次が四方顧問なのだが、さすが京都府議!
こういった神事には慣れていらっしゃるようで、
玉串を慣れた手さばきで奉納、二礼のあと、
「パン・パン」と二拍手されて一礼。
姿勢もきれいだし、
動作に無駄がなくビシッ!と決まる。
その様子を見ていて、
私は柏手を打つのを忘れたことに気づく!
ありゃりゃ・・・。
普段、東京公演の時は、
ちゃんと二礼二拍手一礼って
やっているのになぁ。
続く高橋さんも小嶋さんも、
ちゃんと作法通りお参りされていて、
トップバッターの私だけどうも気まずい。
でもね、
気持ちが神様に伝わるのが重要なので、
そこは高倉神社の神様も
大目に見てくださるだろう・・・
とは思えどもやはり気になったので、
すべての神事が終わったあと、
宮司さん立ち合いの下、
もう一度祭殿に向かって
二礼二拍手一礼をさせていただいた。
お参りを終えたのち、
宮司さんから「お札(おふだ)」をいただいたので、
舞台セットの裏側のど真ん中の
一番高い位置に納めさせていただく。
(舞台監督の高橋さんが、お札が落ちないよう、
上手い具合に工夫してキチンとつけてくれた)
その頃メンバー達は祭壇を取り囲み、
「これは何ですか?」等、
宮司さんから祭壇の説明を受け、
お供え物のシャインマスカットをいただき、
しばしの団らんのあと、祭壇を片づけた
宮司さんをお見送りすると、
舞台上では、各役者が確認をしておきたい個所、
ピンスポットの確認、転換稽古など、
照明さん、音響さんを交えて、
時間ギリギリまで、集中した確認作業を繰り返し、
いよいよ本番を待つばかりとなる。
前回号でも書いたけれど、
普段の本番の初日の日は、
場当たり、ゲネプロを行ってから本番を迎えるので、
なんとなく心の準備も出来るのだが、
綾部公演では、前日、場当たりもゲネプロも
ちゃんと行ったとは言えども、
今日は芝居を通す事はせず、言ってみれば、
いきなり「本番」となるので、
どの役者も不安を拭うために、
お客様がご入場されるギリギリまで
舞台上での動きや、
セリフのチェックを行っていた。
東京公演では、
開演の45分前に開場としているが、
今回は今朝の時点で、
すでに600名を超えるお客様が
お越しなるのが確実との情報が入り、
しかも皆様、かなり余裕を持って
お越しになるだろうとのことで、
客席入場を開演の1時間前としたので、
舞台上を使っての練習もそれほどは出来ず、
30分程度で切り上げ楽屋に戻るみんな。
楽屋では昼食をとりつつ、
メイキングビデオの取材に応じ、
本番の準備に取り掛かると、
「客入れしましたー!」
と舞台監督の高橋さんの声が
楽屋の廊下から聞こえてたかと思うと、
楽屋スピーカーから
客席のザワザワが聞こえてきた。
そのザワザワ。
キャパ200、300の劇場とはわけが違う。
昔、新宿コマ劇場(キャパ約3000)に
出演した際に聞いた「ザワザワ」に
匹敵するほどのザワザワが楽屋に流れる。
「これはすごいぞ」
と誰もが口にする。
開演30分前、受付からの情報が入る。
「観客数640は楽に超えるようです!」
当初、500人入れば御の字と、
そんな感じで制作の方もおっしゃっていたのだが、
目標をはるかに超える
お客様が中丹文化会館に集まってくださっている。
東京から車で来ている長女の美岐が、
「駐車場が車いっぱいで、
すごいことになっている!」
との情報をラインでくれる。
綾部公演という事で、私の友人や親戚の皆様が、
大阪府交野市や大阪府東大阪市、
大阪府茨木市等からも駆けつけてくれるし、
京都市内に住む90歳になる母親も、
埼玉に住む次女の美和夫婦とともに
車で来てくれるので、
「満車、満席になるので早めに劇場へ!」
と連絡をすれば、
「今、劇場に車止めた!」とか
「一番前の席にいるで~」と友人達からのライン。
「携帯の電源は本番までに切れよぉ~」と、
こちらから連絡をしておきながら、そんな返事を返す。
皆さん、関西地方から来てくれたので、
東京公演よりも近いっていえば近いけれど、
それでも交野、茨木、東大阪等から綾部に来るとなると、
車で2時間ちょいはかかるはずだし、
京都市内からでも車で1時間以上はかかるのに、
駆けつけてくれたみんなの気持ちが嬉しい。
本番5分前。
楽屋廊下に出演者、舞台スタッフが集合。
場内アナウンスを担当してくださる
「演劇まちづくりの会」の吉田美和さんも
一緒に参加してもらい、全員で円陣を組み、
右手を前に出して、みなの手を重ね合わせ、
「いくぞ~!お~!」で天高く手をあげ、
いざ本番のステージへ。
吉田美和さんのアナウンスが終わり、
劇団創立以来27年間、
ずーっと音響の野中君が流す
「劇団ふぁんハウスの2ベル」
が場内に響き渡ると、
アマティーとかぶちゃんが
ピアノとヴァイオリンで
ゆったりと奏でる「ゴンドラの唄」が始まる。
やがて場内がゆっくり暗くなり、
シルエットに浮かぶ「三浦知世」役の
ゆみさん(ますだゆみ)が寂しげに登場し、
いよいよ物語がスタートしたのでした。


