「役との出会い」  ますだゆみ

「人生芸夢〜夢のとおり道〜板橋公演」は
無事幕を下ろす事が出来ました。
ご観劇頂いたお客様からも沢山のご感想を頂き
有り難く感謝の気持ちで一杯です。

思えば1年以上「山科明美」という役と共に
生きて来ました。
こんなにも長くひとつの役と過ごしたのは
初めてです。そして「どう存在したら良いか」
悩みも多い役どころでした。

これまで、ふぁんハウスで演じて来た役は
「ざ・クリーンキーパー」では、
ちょっと抜けた、でも家族を愛する
パートのおばちゃん。
「久美・美容室物語」では、
働き者でベテランの美容師。
どちらも実生活にいそうな身近な人物でしたが
今回の「明美」は、劇団の創立メンバーであり
苦労しながら芸を磨いて来た「大女優!」

「大女優」…!?
台詞に書いてある限り、そう言う人物を作らねば!
って、どんな風に演じたらそれらしく見えるのか?
衣装や所作も含め、考える事は沢山ありました。

セリフやト書を頼りに、そして団長の演出に
導いて頂き役を作っていきましたが、
自分の中でも色々と想像を膨らませました。

例えば、女将や座長に対する明美の立場は?
お話の終盤で3人の関係性が明らかになりますが、
お芝居冒頭では詳しく描かれていません。
そこをどう埋めていくのか
逆算して、過去の人生を作り上げてみたり
様々な物語を考えてみたり。

そして淳子に対する明美の思いは?
淳子が現れるまではきっと高山芸術座の
看板だったであろう明美
そこへやって来た若くて綺麗で、
実力・人気のある淳子の存在は辛かった
けれども「芸の道は実力が全て」と
分かっている明美は彼女を認め、
やがてその苦しみも理解し
姉のような気持ちで接している。
それ故、香が現れて荒れる淳子の気持ちが
痛いほどわかる。
とか。

他にもあれやこれや想像する事は
楽しい作業でもありました。

本番が終わって、役にありがとうとさよならを
言わなくてはいけない今、寂しいけど
この役に出会えた事、
この作品を作り上げられた事に
心から感謝しています。

そして私自身の夢へのとおり道は
まだまだ続くのでした。


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