「バス」 須藤あゆみ

その日もいつも通り高速バスに乗りました。
いつも通りの高速に乗る前の分かれ道があり、いつもの道へ…となるはずが、
バスはその道を通らず、混んでいる方の道を通り始めたのです。
当然、混んだ道を進んでいますから、バスは全く進みません。
次第に絶対に後戻り出来ない道を通り始め、いよいよ焦り始めました。
周りの人で、気にする仕草を見せる人は誰1人いません。
山形行きだと思ったけれど、間違えて違うバスに乗ってしまったのではないかとか、
運転手さんが疲れ果ててボイコットして違う道を通り始めたのではないかとか、
私の脳内は大忙しで考えを巡らせます。
仕舞いには、バスジャックなのではないかと思い始めました。
小さい頃に怖いドキュメンタリー番組等を見てしまったせいです。
そして今までの人生が走馬灯のように流れ出し、
それを振り返りながら「もっと感謝すれば良かった。」とか
「もっとやりたいことあった。」とか「享年20なんてそんなの嫌だ。」とか思いました。
そんな事を考えている間にもバスは進み続けます。
このままだと流石に怖いと思ったので、隣の人に声をかけました。
すると、「事故で迂回するって車内放送してました。」と優しく教えてくださいました。
車内放送はきちんと聞こえてたはずなのに、私だけ聴き逃してしまっていたようです。
その後は無事迂回して帰って来ました。

最近はこういった事例や、逆に私だけ聞いていて、
その指示通りに行動していると「どうしたの?そんな事あったの?」と言われるなど、
自分の見聞きした事実が皆と噛み合わない事があります。
忘れないようにしっかり書いたメモが残っているのが一層気味悪いです。
そんな時は自分はパラレルワールドに行っちゃったんだなと思う事にしました。
これからはできるだけパラレルワールドには行かないように気をつけたいです。

今もこのメルマガを書きながら高速バスに乗っています。
メルマガの文章を書くのに夢中になっていたら、降車ボタンを押し忘れ、
たった今目の前で自分のバス停を通過されました。次の降車駅は約1km先です。


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