Page21–「舞台に立つのが好きだと、改めて思った冬」(福岡美佳)
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団長の独り言 2026.03.15
「舞台に立つのが好きだと、改めて思った冬」 (福岡美佳)
今週は団長の平野恒雄に代わり、
公演終了後の特別編として
「福岡美佳の独り言」をお届けいたします。
どうぞ最後までお楽しみくださいませ。
2026年の1月・2月は、
私にとって少し特別な時間になりました。
1月23~25日の「夏の夜空へ 麻布公演」、
そして2月28日の
「劇団ふぁんハウスpresents 演劇と音楽のパフォーマンスショー」。
短い期間の中で、性格の全く異なる
2つの舞台に立つことになったからです。
まず1月の「夏の夜空へ」では、
寂れた旅館で働くやる気のない仲居「山の上ゆかり」を演じました。
この作品は2025年4月にも上演しており、今回はその再演でした。
そこで、ゆかりという人物を改めてブラッシュアップすることになりました。
4月の公演では、ゆかりを
「あまり深く物事を考えていない、ちょっと頭の軽い子」
と解釈して演じていました。
ところが今回の稽古で、団長から
「物語の冒頭で哲学書を夢中で読む」
という演出が付いたのです。
「頭の軽い子が哲学書なんて読むだろうか?」
そう思った瞬間、役作りを一から見直すことになりました。
もしかしたら都会の大学で哲学を専攻していたのかもしれない。
でも都会で働くことに馴染めず、田舎に戻り、
旅館で働くことになったのではないか。
あるいは、何も考えずに働いているのではなく、
「このままでいいのかな。でもどうしたらいいのか分からない」
という思いを抱えながら、
表面では明るく振る舞っているのかもしれない。
そんなふうに想像がどんどん広がっていきました。
ただ、その新しい解釈をうまく芝居に出すことができず、
手こずったこともありました。
それでも稽古を重ねるうちに、
少しずつ新しい「ゆかり」が形になっていくのを感じました。
台本の中の人物なのに、
まるで昔から知っている誰かのように感じられてくる。
役者として、とても不思議で面白い瞬間です。
劇団ふぁんハウスの舞台には2018年から立っていますが、
公演が終わるといつも少し不思議な感覚になります。
あれだけ稽古を重ね、寝ても起きても役のことを考えていた時間が、
本番を終えると突然なくなってしまう。
日常の中にぽっかり空白ができたような気持ちになるのです。
しかし今回は、その余韻に浸る間もなく、
2月のパフォーマンスショーに向けた稽古が始まりました。
こちらは芝居とは違い、歌やパフォーマンスが中心の舞台です。
物語の中の「役」として存在するのではなく、
舞台に立つのはほぼ「自分自身」。
私は舞台で歌を披露する機会はそれほど多くないため、
お芝居とはまた違う種類の緊張がありました。
芝居では役の気持ちを通して言葉を届けますが、
歌は声そのものが表現になります。
台詞とは違う難しさがありますが、
その分、また別の楽しさも感じました。
二つの舞台の稽古を通して改めて感じたのは、
「舞台にはさまざまな表現の形がある」ということでした。
物語を通してお客さまの心を動かすこともあれば、
音楽やダンスで会場の空気を一つにすることもあります。
でも、どちらにも共通しているのは、
お客さまと同じ時間を共有するということです。
芝居の舞台では300人規模の劇場が多く、
強い舞台照明の影響もあって客席の表情はほとんど見えません。
けれどライブショーでは、
お客さまが笑ったり楽しそうにしている空気を
肌で直接感じることができました。
演者と客席が一体になっている感覚は、
とても新鮮で幸せな体験でした。
1月と2月、二つの舞台を経験して改めて感じたのは、
「舞台に立つことが好きだ」という、
とてもシンプルな気持ちでした。
役として生きる時間も大好きですし、
歌やパフォーマンスで空間を作る時間も楽しい。
表現の方法は違っても、
観ている方々に何かを届けたいという思いは同じなのだと思います。
そして舞台の魅力は、一度として同じ瞬間がないことです。
同じ台本でも、同じ曲でも、
その日の空気やお客さまの反応によって
舞台の表情は少しずつ変わります。
だからこそ、何度経験しても飽きることがありません。
次の舞台は8月と少し先になりますが、
また新しい役や表現に出会えることを楽しみにしています。
舞台に立つたびに、まだまだ学ぶことはたくさんあります。
その一つ一つを大切にしながら、
これからも舞台に向き合っていきたいと思います。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。

