Page16–「『夏の夜空へ』成功までの軌跡3」

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団長の独り言 2026.01.23-3

「夏の夜空へ」成功までの軌跡3
1月23日(金)「初日」

初日の朝6時台、相変わらず寒い。
凍える空気が清々しいが、
昨日の疲れが残っているのが悔しい・・・。

どんなに前日疲れていても、
初日は疲れも吹っ飛んだのに、
ここでも「年齢」を
感じずにはいられない。

しかし、
疲れただのああだのこーだのは
言っていられない。
今日から3日4回公演が待っている。

車に乗り込むと
ブルートゥースで車と携帯を繋ぎ、
ハウンドドッグのフォルティシモを掛ける。

28年前から
本番初日の朝には必ず聞いてるのだが、
イントロが
大音量で流れると気合が入る。

「♪激しく、たかぶる夢を眠らせるな!
あふれる思いを諦めはしない!♪」

大声で一緒になって歌い、
「夢」、この言葉で魂を奮い立たせる。

何度も何度も繰り返し、
聞きながら大渋滞の都心を走る。

8時40分劇場に到着。

全てのメンバーが
顔を揃えているのは、嬉しいよねぇ~。
過去には初日の朝、
寝坊したメンバーがいたこともあったし、
階段から落ちて足首をねん挫して、
治療のため遅れてくるメンバーもいたし、
まぁ~28年もやっているとね、
様々な初日の朝があるけれど、
こうして全員が
当たり前に顔を揃えているのは、
実は当たり前ではない。
皆さんの健康管理と責任感に感謝。

9時30分、
毎回の恒例行事、
舞台上にて成功祈願を行う。

舞台セットの上に「明治神宮」の
お社に入ったお札(おふだ)を設置し、
神様を取り囲むように
出演者、スタッフさんが全員集合する。

前回の綾部公演では、私の念願であった
本物の神主様にお越しいただいての
成功祈願を行った。

会場となった中丹文化会館近くの
高倉神社の宮司様が
本格的な祭壇を準備して下さり、
幾重にも重なる正装の装束をお召になり、
とても心に沁みる
ありがたき祝詞を唱えてくださった。

メンバー達は、
宮司様の祝詞の内容が
ふぁんハウスへに向けての
感動的なものであったため、
聴きながら涙したものだ。

ただ今回は、
予算の関係上、とてもではないが
神宮から出張お参りを
お願いするわけにもいかないので、
いつものようにアマティアズが
「神主代行」となり、
簡素な祝詞を聴きつつ首を垂れ、
願いはひとつ!「公演の大成功!」

成功祈願を終えると、
昨日の場当たりの続きとなる
2幕の中盤から。

開始直前、
舞台監督の高橋さんが私のそばに来て、

「場当たりがスムーズに進んでいるんですけど、
ゲネ開始は予定通りにしますか?
そうすると、ゲネ開始まで休憩時間が多めに
とれます・・・それとも、
ゲネの開始時間を予定よりも早めて、
本番までの休憩時間が長めに確保しますか?

と言う。

そりゃ~もちろん!本番までの休憩時間を
予定よりも多く確保してもらうほうがいい。

ゲネ終了後に、さらに修正したい個所が
出てくるかもしれないし、
本番までの時間に
余裕があるに越したことはない。

そこで、ゲネプロの開始時刻を、
45分程度早めてもらう予定にして、
昨日の続きの場当たりを行えば、
意外とつまずく箇所が多い。

特に、「伸ちゃん」役のイクシー事、
生島君の動きが、
なかなかしっくりこない。
彼は全盲でありながら、
「目の見える役」に挑戦している。

稽古場では本番の舞台セットを想定して、
様々な工夫と、
共演者との打ち合わせを繰り返し、
「見える人に見える」ように玄関を入り、
ソファーに座るという芝居も
出来るようになったのだが、

実際の舞台セットだと、
当然ながら
稽古場のようなわけにはいかなくて、
距離感がつかめずに、
何度もソファーに躓く。

前回、板橋の「夏の夜空へ」で
彼は同じ役を演じたのだが、
イクシーの事は知らないお客様から、
「見えない人だとは思わなかった!」
という声を
沢山頂戴することが出来たので、
今回も大丈夫か?と思いきや、

劇場が違えば距離感も空気感も違うし、
演出や登場の仕方、
あとは共演者の動きも変更になっているので、
板橋公演でうまくいったからといって
麻布でも出来るってものでもない。

どうやれば、「こんちは~」
と言って旅館の中に入り、
自然な形で座ることが出来るのか?
みなで考えながら、場当たりを進めて、
なんとか形になったけれど、
あとはイクシーの
「やる気」と「謙虚さ」にかかっている。

そのほかにも
「蛍」演じる中村ふみかちゃんの
超・スーパー早替えの場面。
稽古場では間に合った早替えも、
本舞台ではギリギリで余裕がない。

ただ本人も、フォローについている
みっちゃん(鈴木美千代)も、
全力を尽くしているので、
間に合うって言えば
間に合うのかもしれないが、
余裕のない心が、そのまま
芝居にも現われてしまっている。

そこで、「蛍」が登場するまでの
曲の構成を変えるよう、
アマティアズ達に要求してみたら、

対応にも関わらず、文句ひとつ言わず、
瞬時に対応してしまう。

クラッシック出身の音楽家というのは、
「急に言われても出来ません」
「楽譜通りに演奏します」
というのが基本らしく、
いきなりの曲の構成変更を
お願いしても、
快く引き受けていただけない・・・
なんて話はよく聞く。

それなのに、二人は私の要求に対して、
「わかりました」とだけ言って、
その数分後に、
ちゃんと形にしてしまうってのは、
改めて2人のすごさを実感する。

そんなこんなの出来事があり、
意外と時間のかかった
場当たりではあったけれど、
それでも予定よりも早く終わり、
あとはゲネプロと、
そして夜の本番を待つだけと
なったのでありました。


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