Page4–「常に芝居は変化、進化する。」

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団長の独り言 2024.4.28

「常に芝居は変化、進化する。」

新メンバーを迎えての稽古、
クライマックスシーンまで辿り着けた。

「役者が代われば
こうも芝居が変わるものかっ!」

というほど
前回公演とはまるで違う演出となり、
日々新鮮な気持ちで、
「ふたりのゆめ」
という作品と向き合い、
本日より、各シーンをより
細かく付けていく稽古へと突入する。

最初のシーンは問題なく過ぎていくが、
元大物演歌歌手で、現在は老人ホームの
住人である三浦知世の元に、
彼女が以前所属していた事務所
「オーシャン・ミュージック」の
「岸本良美」という
マネージャーが訪ねてきたシーン2での
二人の役者のやり取りに違和感があり、
芝居を止める。

「岸本」演じるあゆみちゃん(須藤あゆみ)が、
「知世」演じるゆみさん(ますだゆみ)に
笑顔で話しかけている芝居が
浮いているように感じたので、
「何故、笑顔での芝居をするの?」
と彼女に訊ねたら、

「ここのシーンは、
笑顔で話しかけるようにって
ダメをだされたので・・・」
との事。

んんん!?そっかぁ~
以前ここのシーンの芝居を付けた時には、
確かにそんなダメを
出したような気がする・・・。

その時のあゆみちゃんは
ダメ出し通りに
「笑顔」で話しかける「岸本」を演じ、
芝居を受けた「知世」とのやり取りが
みょうに面白くて、「知世」と「岸本」の
関係性がうまく表現出来ていた。

それなのに何故だろうか?
今日の「岸本」は、
とても不自然に感じてしまう。

ちゃんと前回のダメ出しを
活かした芝居をしているのだが、
なんか違う。

そこで「今日の私」は、
このシーンの「岸本」は笑顔ではなく、
真っすぐ「知世」の目を見て、
一生懸命、
「行方知れずのあの人歌合戦」
というテレビ番組の
出演依頼を「知世」にしてもらうべく、
前回、ここのシーンを行った時とは
まるで違うダメを出してみた。

「笑顔はなし!真剣に!
一生懸命、知世に伝えて!」

前回と
全然違うダメを彼女は出されて、
ちょっと戸惑ってはいたけれど、
すぐさまのダメ出しを活かした
「岸本」を演じると、いい感じ!

聞くところによれば、
私の演出って、ダメ出しが
日によって違うってことが
よくあるらしい。

それでもみんなは、
「分かりました!」と言って、
「最新のダメ出し」を
素直に受け入れてくれる。

いやはや・・・申し訳ないです。

ただ・・・そんな現象も
「どんな演出がいいか?」
と試行錯誤の繰り返している
今のうちだけ(のはず)。

芝居が固まるまでは、
大体こんな感じでの稽古が続くので、
何卒、ご理解いただければと思う。

あと、
今日の稽古で結構時間を割いたのが、
劇団ふぁんハウスの稽古では珍しい、
役作りを行う上での
共演者同士のディスカッション。

お互いの役が何を想い、
どういう気持ちでいるのか?
それぞれの役の人物の立場からの
様々な想いや、その時の気持ちを
語り合う。

これがなかなか面白かった。
個々の役者は、思い思いの中で
それなりの役作りはしてはいるが、
時に、
その役作りが独りよがりとなり、
「作られたお芝居」になってしまう
場合があった。

じっくりと役の人物として
共演者と話合って、
とある場面を演じてもらうと、
なんてーのかな?心が通い合い、
嘘くさくない芝居になっていた。

次に、「立花」の芝居に違和感のある
シーン6を細かく稽古していく。

このシーンは、
ラウンジで一人佇む「知世」に
「こんにちは、今日もお一人ですか?」と、
老人ホームの職員「立花」が
声掛けるところから始まるのだが、

その「知世」に声を掛ける「立花」は、
一体どんな経緯があり、
どんな心境でラウンジにいる
「知世」に声を掛けたのか?

彼の芝居を観ていても
今一、良く分からなかったので、
脚本には描かれていない部分を、
即興劇(エチュード)で演じてもらう。

設定としては、
物語には登場しない「所長」が、
「立花」にあるお願いをするという
物語の伏線ともいえる場面。

「所長」役は、
たけもっちゃん(竹本和弘)にお願いをして、
自由にアドリブで、
脚本に描かれていない部分のやり取りを
行ってもらうと、
二人のやり取りがめちゃめちゃリアルで、
面白くて、見応えがあった。

この即興劇で、
何かを掴んだであろう高取君。

そこで、もう一度、
「こんにちは、
今日はお出かけしないんですか?」
と言って芝居が始まるシーン6を行えば、

最初の嘘くさい芝居とは
比べ物にならないくらい、
自然で素直な「立花」が現れた!

すると、その「立花」の芝居を受ける
「知世」役のゆみさんの芝居も変化して、
とても穏やかで自然な感じに変化していた。
これぞ演劇のだいご味。(大袈裟・・・)

全てのシーンでも、
こうした脚本に描かれていない
場面の即興劇もやりたいところだが、
さすがにそこまでの時間はない・・・。

でも今日の稽古は、
稽古場にいた誰もが何かを掴む
きっかけになったんじゃないかなぁ?
そんな、とても充実した稽古でありました。


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