Page19–「『夏の夜空へ 板橋公演』 を振り返る・その5」

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団長の独り言 2025.04.18-5

「夏の夜空へ板橋公演」を振り返る・その5

開演45分前、「開場しまーす」という
舞台監督さんの声と共に、
誰も座っていないかった客席に
お客様が続々と入ってこられると、
劇場の空気も一変する。

心を落ち着かせようと
瞑想しつつブツブツとセリフを言う者、
静かに台本に目を通す者、
メイク直しを行う者。

私はと言えば、
衣裳、メイクをバッチリ済ませ、
舞台セットの裏側にこっそりと向かい、
誰の邪魔にもならない場所を
見つけて横になり、
「演出家」「劇団の代表」で、
頭がゴチャゴチャしていたものを
クリアーにして「役者」になるべく、
目をつぶって「寝る」。

開演5分前、
アラームの振動で目を開けると、
頭も身体もスッキリしたので、
楽屋へと向かうと全員集合している。

楽屋の扉を閉めて全員で円陣を組み、
右手を前に伸ばして手が合せ、
ひとつになったところで、
「いくぞー!」「おー!」
で気合を入れ、
各自が舞台袖にスタンバイ。

ボイスさんの場内アナウンスが終わり、
アマティアズのピアノ演奏が流れ始め、
いよいよ
「夏の夜空へ板橋公演」が始まった。

演奏が終わって
セミの声が場内に響き渡ると、
伸ちゃん役のイクシーが
練習の成果を遺憾なく発揮して、
「こんちは~」
と元気よく第一声を発する。

「よっしゃ!」と誰もが思ったに違いない。
イクシーに負けじと、
二番手の「ゆかり」演じる
美佳ちゃん(福岡美佳)も、
落ち着いた芝居でとてもいい。

ここからは待ったなし!
次々と登場する人物達も、
テンポよく落ち着いた芝居で、
お客様をドンドンと物語の世界へと誘い、
千秋ちゃん演じる「里美」の
激しい踊りの後には、
なんと会場から割れんばかりの拍手が!

その次の場面で、
いよいよ私演じる「木島」の登場。

皆さんが作ってくれた
「いい空気」に乗せられて、
無我夢中で「木島」を演じる。

その後もみんなはテンポよく、
「丁寧」に演じていて、
やがて1幕は終了。

出演達にしてみたら、
とにかく
ガムシャラに演じていたって
感じではあったけれど、

テンポはいいし、
セリフのトチリもないので、
今のところは大丈夫かな?
ってはところではあるが
楽観はできない。

2幕でも、
初日ならではの緊張感に包まれながら、
後半も一気にクライマックスまで持って行き、
無事終える事が出来た。

御来場いただいたお客様からの
アンケートを読ませていただくと、
ありがたい事に、
観劇して下さったお客様は、
とても満足して下さっているようで、
ホッと胸を撫で下ろす。

明けて2日目、
楽日の午前10時、舞台前に全員集合。

初日は大きなミスもなく、
お客様も大変満足されていたのを
実感してはいるものの、
だからと言って「余裕だぜぇ~」って
思っているのメンバーは誰もいない。

さらにいいお芝居を千穐楽にお届けすべく、
気になった箇所や確認しておきたい箇所を
それぞれの役者に出してもらい、

照明&音響さんと演奏者二人が加わり、
場面転換絡みの箇所の抜き稽古を
順を追って行っていく。

やってもやっても、
確認したいという気持ちになるけれど、
その一方で、
「昨日の初日で上手くいったし」
という悪魔が忍び寄るのもこの2日目。

どうか、どうか皆さん、
昨日の初日でちょっと
上手く行ったからと欲を出さず、
名優気取りしないで、落ち着いて、
キチンとした芝居で幕を下ろして欲しい!

そんな話を皆にして、休憩と準備に入り、
しばらくすると、お客様のご入場いただく
「開場」時間となる。

楽日だという事もあるのだろうか?
開場と同時に劇場内に入って来られる
お客様の勢いが昨日と違う。
楽屋モニターからも、
お客様の熱気が伝わってくる。

私は昨日同様、
舞台セットの裏側の
邪魔にならない場所に横になり、
精神統一をしつつ
「木島達也」になる。

幕が開いた直後は、
初日にも増して、
みなのパワーがアップしていて、
テンポもいい!

「こりゃ~いいかも!」と思いながら、
楽屋モニターで芝居を観ていると、
「里美」役の千秋ちゃん(鈴木千秋)の
声がなんだか変だと感じる。

いつもの迫力のある声が出ていない。
そうこうしているうちに、私の出番。

わちゃわちゃしたシーンを終えて、
千秋ちゃん演じる「里美」と、
二人芝居のあるシーンが続いていくと、
彼女の声は、
ドンドン出なくなっていっている。

これはまずい!
彼女は、この先からは
かなりの大声で、迫力を出して
叫ぶシーンが随所にある・・・

声の調子が悪いのは、
当然、本人も分かっているはず。

彼女との二人芝居を終えて、
舞台袖に戻るやいなや、彼女に近寄り、
「出番直前ギリギリまで喉のケアーをして!
水の入ったペットボトルを袖に常に置いて!
のど飴も出番ギリギリまで舐めて!」

と注意をしたのだが・・・

当の本人は、私が見る限り、
舞台袖でも普段と何ら変わらず
舞台上でも、声をセーブするでもなく、
いつものように出ずらい声で演じている。

これは危険だ!
と感じた私は1幕が終わり、
休憩に入るや否や彼女の元へ行き、
「過信するな!」と伝えたのだが・・・。

つづく。


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