Page1 -「新作のタイトルは!」

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団長の独り言 2021.10.02

10月2日(土)
「新作のタイトルは!」

先週のワークショップ終了後、
出演者全員に新作の仮台本を配り、
「家に帰ってじっくり読んで、
稽古開始の時に感想を聞かせて下さい」
とお願いをしたのだが、
本日、
第一回目の読み合わせ日を迎える。

稽古場に到着すると、
ほぼすべてのメンバーが顔を揃えている。

テーブルの上に先週配った
仮台本が各自の前に置かれていて、
中には、付箋でシーンを区切っている
人もいる。

そんなみんなの表情をさりげなく伺いながら、
私は演出席に腰を下ろし、
さりげなく
開始の準備をしているふりをしながら、
みんなの表情を探る。

「こんな脚本で
いいと思ってくれたのかなぁ?」
「面白いって思ってくれたのかな?」
「つまらなそうな顔をしている人はいるかな?」

うーん・・・さりげない笑顔の人もいれば、
真剣な人もいる。

稽古開始前に
雑談をしている皆さんの表情からだと
脚本の評価はうかがい知る事は出来ない。

だからと言って、どうでした?面白かった?って
気軽に皆に話しかける勇気はない。

私から「どうした?」って言葉を
軽い感じで投げかけられ、
それに対して、ひきつった笑みを浮かべながら、

「は、はい・・まぁーなんか
面白いんじゃないんですか?」

なんて言われてしまうと、
しばらく立ち直れないからねぇ。

新作が完成して、出演者に配り、
読んでもらった感想を聞くのが
非常に怖いのは毎度の事なんだけど、
いやはや、
みなさんの目がまともに見られない。

そうこうしているうちに、
稽古開始時間となる。

まずはお待ちかね、とにもかくにも
脚本の感想を聞くことから始める。

ロの字型に並んだ長テーブルに座る
十数名のメンバー達の端から順に
「感想」を言ってもらうと、

「派手さはないけれど、ジワジワ来た。」
「親子愛、師弟愛が素晴らしい。」
「ノスタルジック!」
「まさにこういう美容室に通っていた」
「〇〇を〇〇のところが感動した」
「ジーンときた」
「翌日読もうと思いつつも、
最初の数行をチラッと読んだら
あまりにも面白くて、
そのまま一気に読み進み、
気が付けば夜中だった」等々、
作家冥利につきる素晴らしい感想ばかりで、
ありがたいやら嬉しいやら。

出演者全員の感想を聞いて、
第一関門突破といったところだ。

次に制作的な話として、
稽古日程や開演時間等の説明、
予算、そして観客数の説明等行う。

観客数は緊急事態宣言が解除されたので、
現時点においては
劇場最大収容人数(キャパ)どおり400名
というお達しをいただいてはいるのだが、
これはあくまでも「現時点で」という事なので、

万が一、また感染者数が急増し、
緊急事態宣言や蔓延防止なんちゃらが出た場合、
収容人数は最大収容人数の50パーセントで、
200名となってしまう。

先の読めない「コロナ感染」との駆け引きは、
どうにもこうにも判断が難しいところ。

今しばらく世間の様子を見極めつつ、
共催として今回もお世話になります
「キスポート財団」の担当者の方と
意見を取り交わしながら進めて行く
という事をみなに伝え、
ドキドキの読み合わせを開始する。

大体どれくらいの上演時間になるのか?
ということが知りたかったので、
途中で芝居を止めることはせず、
好きなように読んでもらう事にしたのだが、
前もって脚本を配っていたので、
比較的スムーズに流れる読み合わせとなる。

ただ演じる全員が、なんだろうなぁ・・
張り切りすぎているというか、
前回のクリーンキーパーの役柄を
そのまま引きずって、
この作品の登場人物を演じてるように思えた。

セリフもどこか遠い人にむかって
しゃべっているようだし・・・。

ところどころ、「そうそう!それそれ!」って
思える箇所もあったけれど、
全体的にとっても大げさな感じがした。

でもね、
何はともあれ、私の頭の中でしか
喋っていなかった登場人物達が、
実際の声で動き出しているのを聞くというのは、
本当に嬉しい事ではある。

しかも所要時間は2時間4分!
正直、2時間30分くらいになるかと
ドキドキしていたけれど、
徐々にテンポも良くなるだろうし、
初回の読み合わせでこの時間ならば、
そこまで脚本のカット作業を
行わなくても済みそうだ。

こうして、
劇団ふぁんハウス第40回公演
「久美美容室物語」は
めでたくスタートしたのでした。


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