Page23– 「久美・美容室物語」その4

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団長の独り言 2022.02.12(その4)

「久美・美容室物語」その4

2月23日(土)初日の朝、晴天!
2日前、天気予報どおり雪が結構降り、
どうなることかと心配したが
さすが晴れ劇団!

劇団ふぁんハウスは
創立24年目で40回公演を迎えるのだが、
初日 の朝、雨や雪に見舞われた事って
一度もないんですよ。

今回も「真っ青な空」の下、
平野カーに乗り込む平野家の面々は、
いざ「赤坂」へ!

・・・と言いたいところだが、
劇場には車の止め置きが出来ないので、
赤坂ではなくいざ新宿へ!

車のオーディオを操作して
流す曲は劇団ふぁんハウスの「団歌」でもある
ハウンドドッグの「フォルティシモ」。

この曲で気合を入れて劇場へ向かうのは、
第1回公演の初日の朝から
ずっと続いているので、
これもゲン担ぎのひとつ。

今では初日の朝しか聞かない曲と
なっているので、
妙に新鮮で、心が昂ぶり気合が入る。

♪「激しく!たかぶる夢を眠らせるな!
あふれる思いをあきらめはしない!
愛がすべてさ、いまこそ誓うよ、
愛を込めて強く強く!」♪

何度となくリピートして流しているうち
に新宿の駐車場に到着。
ここから電車に乗り換え、
赤坂区民センターへ。

劇場の最寄り駅となる
青山一丁目駅に到着するとドトールコーヒーに行き、
モーニングセットを頼み、朝食を済ませ劇場に入り。

劇場内に入るなり女子楽屋男子楽屋と顔を出し、
挨拶をしつつさりげなく全員いるかどうかの
確認をすれば、よ〜し!全メンバーが
顔を揃えております。

こうして全員集合しているのが
当たり前でない今の世の中、
笑顔で全員が楽屋に顔を揃えているのは、
とてもすごい事。

約30分後、
出演者スタッフ全員がステージに集合し、
まずは成功祈願から。

舞台中央に
「明治神宮」のお札の入った「お社」を供え、
その「お社」を取り囲むように全員が整列をして、
二礼二拍手一礼、神主係のアマティアズの祝詞、一礼
という神式に則っての成功祈願を行い、
関係者全員の気持ちをひとつにし、
私からの挨拶、舞台監督の高橋さんからの
注意事項等があり、
早速「例の問題点」をどうするか?ってところから
場当たりを始める。

「例の問題点」というのは・・・
今回の芝居で巨大なスクリーンを使って
ある映像を大きく映し出す場面があるのだが、
劇場備え付けのスクリーンが下りてくるのに
1分30秒もかかってしまうって事が判明した。

さすがに場面と場面の間で
真っ暗闇の暗転を1分30秒ってのは
ありえない。

舞台監督の高橋さんが
この事実を伝えに来たのは、
ちょうど前日の照明さんのシュート作業の
真っ最中だった。

「団長、劇場入り前に確認すべきだったのですが、
スクリーンが下り切るのに
1分30秒も掛かってしまうんです・・・
確認をしなかった僕のミスです」

との事。
でもね、これは私も高橋さんと同じ感覚だった。

6、7年前、こちらの劇場で、
やはり巨大スクリーンを利用しての
芝居を行った事があったのだが、
私も高橋さんも、確かにゆっくり
スクリーンは下りていたという感覚はあったにせよ、
そんなに時間が掛かった記憶がなかったので、
いやはや・・・
私も高橋さんも油断してしまっていた。
だから高橋さんのミスだなんて!
そんなことはないですよ。

むしろよくぞ場当たりが始まる前に、
ちゃんと確認してくれたものだ!と
私はそのことに感心をした。

まだ場当たりが始まる前に
気づいてくれたので、
いくらでも対処方法はある。

そこで高橋さん案としては、

「場面が終わる→中割幕が閉まる→
スクリーンを下ろす」

という当初の予定ではなく、
芝居の途中でアマティアズのBGMが入り、
照明が変化するそのタイミングで、芝居はまだ
続いているけれど、中割を早々に閉めてしまい、
早めにスクリーンを下ろしてはどうか?との事。

一方の私の案としては、
中割幕がしまったあとに新たなシーンを創るので、
幕前で二人の役者に芝居を行ってもらいながら、
時間稼ぎをして、その間にスクリーンを
下ろすという案。

高橋さん案の問題点は、
タイミングで大丈夫なのか?
やってみなきゃ分からないというところと、
役者も芝居中に幕が閉まる事になるので、
幕が閉まるタイミングで、上手く幕前に出られるか?
どうかって事。

私の案の問題点は、短いシーンとはいえども
本番直前のこの期に及んでシーンを追加してしまうと、
役者がちゃんとセリフを覚えて対応出来るのか?
っていうところ。

まぁーでもね、どちらの案にせよ、
私も高橋さんも、長年の経験から
「なんとかなるさ」って、どこかで
思ってはいるので、そんなに焦っちゃいない。

焦っちゃいないけれど、
今回の場当たりでの一番の問題点であるには違いない。
だから昨日の場当たりは、比較的ハイテンポで進めて、
今日のこの「スクリーン問題」に
かなりの時間を割く予定のようだ。

私は、皆さんに動きが変わる旨をまずは説明をする。

「高木の
『錦ヶ浦?ってあの・・・〇〇で有名な!?』
でアマティーのピアノが入りますので、
そしたら、皆さん、中割幕よりも前に出ながら
芝居をしてください。」

事前に何の説明も受けていない
役者達の頭の中は???だらけだけど、
高橋さんが私の補足で事の成り行きを説明すると
皆さん、なんとなく理解したようで、
とにもかくにも、
スクリーンが下りる場面をやってみると・・・

ダメだ・・・・。
スクリーンを下ろすタイミングを早めたのに、
次のシーンの「錦ヶ浦」の芝居が始まっても、
まだスクリーンは動いている・・・。

高橋さん、私、転換スタッフさんとで
「じゃーどうするか?」を考えるが、
落ち着いてゆっくり議論する時間はないので、
ここはもうヒラメキでパッ!パッ!と
決めなきゃいけない。

平野「シーンを追加しましょうか?」
高橋「いえ!スクリーンを下ろすタイミ
ングをもっと早めてみます。」
平野「ってことはまだ照明が変化する前ってこと?」
高橋「そうです。団長、客席に座って、
スクリーンが下りて来るのが気になるか?
確認してもらえますか?」

高橋さんに言われるがまま
私は客席のやや前の方に座り、
どのタイミングでスクリーンが下りてきているのか?
注意しながらこのシーンの芝居を見守っていると、

芝居の途中からスクリーンが
下りてきているはずなのに、
下りて来るのは全く分からない。

よーくよーく更に注意して下から上を見上げると、
スクリーンが下りてきているのが確認出来るけれど、
お客様は、おそらく芝居の最中にスクリーンが
下りて来ても気にならないレベル。

スクリーンが徐々に下りてきても芝居は続き、
やがてアマティアズのBGMが入り、
照明が変化して中割幕が閉まる。

そして舞台は暗転となり、
「熱海〜熱海〜」というBGMが流れ、
それとクロスするように中割幕が開き、
カモメの鳴き声と共に舞台に明かりが入ると、
ちゃーんとスクリーンは下り切っていた。

「高橋さん!スクリーンが下りているの
全然分からなかった!すごい!」

私は思わず叫んでしまう。
ただこのスクリーンを下ろすタイミングってのは、
高橋さんの肌感覚に掛かっている。

なにせほら芝居は生ものなので、
役者のしゃべるテンポって、
その時によって微妙に違うから
職人の技にかかっているってところだね。

そのハラハラドキドキの問題点も難なくクリアーし、
場当たりは順調に進み、最後のクライマックス、
そしてエンディングのフィナーレと順調に進み、
場当たりは終了となる。

時計に目をやれば11時!
あと1時間でゲネプロ開始となるのでした。


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