Page2 –「稽古始め」

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団長の独り言 2023.09.30

9月30日(土)「稽古始め」

17時50分、稽古開始10分前、
稽古場としている施設に到着。

車を止めて、建物内に入り、
部屋に近づくと、
ざわざわとしたみんなの声。

さっきまでなんともなかったのに
いきなり緊張し始める。

「どんな顔して入ろうか?」

ってそんなしょうもない事を考える。

今、部屋の中にいるメンバー達は、
私が苦戦して描いた
新作・「ふたりのゆめ」の脚本を
すでに読んでいるはず。

耳を澄ませば、
みんなの笑い声が聞こえてくるから、

「こんな作品、やってられません!」

って雰囲気ではなさそうだけど、
どーかぁ〜?って思いつつ、
とにかく笑顔が一番!

「おっはよぉ〜ございまぁ〜すぅん」

って陽気に陽気に
入ろうかとも思ったけれど、
いい歳してそれもなんだし、
高倉健のように寡黙に「ども」ってのは、
それはそれでなんか違う。

そこで目立たぬように、さりげなく平常心で
さらりと「おはようございます」って
控えめに入ると、
前々回の「人生芸夢」赤坂公演の本番直前、
腰、膝を負傷し無念の降板をして、
板橋公演も出演出来ずにいた
よっちゃん(永井良則)と目が合う。

「どぉーも!」ってとびっきりの笑顔で
よっちゃんは近づいて来てくれた。

「どうですか?体調は?」

と私が言い終わらぬうちに、
よっちゃんはピョンピョン飛び跳ねて
「御覧のとおりですわ!」と笑顔。

「今回からまたよろしくお願いします」
と二人で挨拶を交わして、
まるで夏休み明けの小学生のように
はしゃいでいる皆さんにも各自笑顔でご挨拶。

誰も彼もとっても楽しそうだけど・・・
心のうちはどうだろうか?

「今回の作品は、どーもいかんですね。」

と思ってんじゃないの?と、
みんなの感想が気になるが、
とりあえず、
みんな楽しそうなのは何よりだ。
また、このメンバーで芝居が出来る喜びを
みんなが分かち合っているって感じ。

そうこうしているうちに、
時間となったので、
「ふたりのゆめ」の顔合わせを開始する。

まずは、今回から新メンバーとして
参加する岡本あざみさんの自己紹介。

彼女は芝居の経験はあるそうで、
あとはパフォーマンスも
定期的に行っているという
多彩なメンバーが加わる。

次に本番に向けての制作的な話を
千秋ちゃんとゆみさんに行ってもらい、
さぁーいよいよ!
新作・「ふたりのゆめ」へと突入。

まずは、
この作品を描くにあたって私が何を想い、
何を感じてもらいたいのか?ってのを語り、
作品のテーマみたいなものについても説明する。

今回の作品は、前回の「人生芸夢」と違って
派手な場面はひとつもない。
会話と会話で、それぞれの心情を
表現してもらわねばならず、
皆さんも感じてはいるかと思うけれど、
ごまかしの利かない
「心を演じる」作品となっている。

タイトルの「ふたりのゆめ」というのは、
登場人物が沢山出てくるのだが、
それぞれ「ふたり」の夢が
みんなの夢になるという、
自分で言うのもなんなのだが、
劇団ふぁんハウスの真骨頂のような作品。

の!!!はずなんだけど、
さて皆さんの感想やいかに!?

ドキドキしながら、
まずはひとりひとりに感想を伺っていくと、

「泣いた!」
「ぐっと来た」
「これはジワジワ来ます」
「人生について色々な事を考えさせられる」
「深みがある」

というような意見を皆さんから頂戴する。
全員の意見を聴き終えて、
私はあらためてみんなに

「この作品で・・・大丈夫かな?」

って聞くと、誰もが強く頷いてくれたので、
なんとか第一関門は突破したかな?
とは思う。

しかし・・・今回もありました。
脚本の矛盾点。

数名のメンバーから、
「あのね団長」と
数々の矛盾点の指摘を受ける。

詳しい事は
脚本の中身に触れるので書けないが、
例えば・・・

「大学の受験代は、
受験の当日に払わないです」とか、

「印税は、曲を作った人に入るものですので、
歌い手さんには基本的に入りません。」や、

「番組名が最初とあとでは違っています」

「『ゆまちゃん』が『まゆちゃん』に変わってます」

等々、次々と脚本へのダメ出しが。

時系列は、脚本を読んで「???」と思った
ゆみさんや千秋ちゃんから、
みんなに脚本を送ってすぐくらいの時に
質問のメールが届いたので、
そこは結構修正したので
大丈夫だとは思うんだけど、いやはや・・・
まだありましたかぁ・・って感じ。

まっ、あの・・・そういった事も、
平野作品が完成したばかりの時の
恒例行事ってことで、はい!ご勘弁を。

まぁーそんなこんながあって、
いよいよ本日のメインイベントとなる
キャスティング発表。

私の頭の中にあるキャストを
一気に読み上げると、
稽古場の空気が変わるのが分かる。

全員、気持ちが引き締まったところで、
とにもかくにもまずは読んでもらい、
あまりにも
私のイメージしたキャスティングと
かけ離れている役者に関しては、
配役を見直さなきゃいけないので、
ここからは本気の真剣勝負。

で、実際に読んでもらうと、
いいじゃないですか!
「生きた」芝居をみながしてくれる。

一旦キャストを発表して、
「やっぱり、この役は誰々で」ってのは、
出来る事ならしたくはないけれど、
これならば大丈夫。

あとは皆さんが、
自分の役をうーんと好きになって、
脚本を越えた芝居をみせてくれれば、
役がどんどん膨らんで、
セリフや登場場面が増えていくのも、
いつもの劇団ふぁんハウス。
(但し、残念ながらその逆もあるけれど・・・)

次回は、皆さんの個性が大爆発する
読み合わせを期待しておりますよ。

つづく。


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