Page7 –「製本された台本」

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団長の独り言 2023.11.05

11月5日(日)「製本された台本」

前回号でちょろっと紹介したけれど、
今回の作品「ふたりのゆめ」の演奏には、
ピアノのアマティアズに加え、
ヴァイオリンが加わる。

そのヴァイオリン奏者・株竹大智君が
先週の土曜日、稽古場にお越しになった。

彼は武蔵野音大を卒業し、
その後クラッシックに留まらず、
あらゆる
音楽シーンで演奏活動を行っている
20代半ばの青年なのだが、

前回の「人生芸夢?夢のとおり道?」を観劇し、
とても感動して下さったようで、
アンケートの「参加したい!」という項目に
チェックをしてくれた。

そこで連絡を取らせていただき、
とにもかくにも
稽古場に来ていただく事となり、
先週、観るからに高価そうな
ヴァイオリンを持って
株竹君はお越しになったのだ。

まずは名刺代わりに
「何か一曲」とリクエストをすると、
素人が聴いても、「本物」ってのが伝わってくる
素晴らしいクラッシック音楽を演奏してくれた。

そこで今度は、
今回の作品、「ふたりの夢」のテーマ曲でもある
「ゴンドラの唄」をリクエストすれば、
彼は躊躇する事なく、
アマティアズのピアノ演奏に合わせて
静かに弾き始める。

その優しく語り掛けてくるような
ヴァイオリンの演奏を聴いていると、
私の描きたい「ふたりのゆめ」の情景が
曲に合わせてドンドンと浮かび上がり、
涙が自然と込み上げてきた。

これはすごい人が来てくれたものだ。
いやホントに。

早速、芝居のクライマックス部分で
ある曲を静かに弾いてもらえば、
芝居とピアノだけでは、
なんだかチグハグしてていたシーンが、
めちゃめちゃドラマチックな場面となり、
そのあとに続く芝居も、
すごくいいモノへと変わった。

ヴァイオリン演奏に
役者の芝居が助けられたって感じ。

彼はまだ脚本を読んいないのに、
私の簡単なシーンの説明だけで、
芝居に寄り添う演奏が
出来てしまうというのは、
いやはや・・・恐れ入りました。

素敵な演奏に
負けないような芝居をつくらねば!
気持ちを引き締めて、
昨日も今日も集中した稽古を行った。

さて、その稽古だが、
これまでは仮・台本での稽古を
行っていたのだが、
数年前から
ずーっと脚本修正に携わって下さっている
Tさんによる矛盾点や疑問点の
ご指摘を参考に脚本の最終チェックを施し、
その完成した脚本の製本作業を本日行い、
今日から「正式な台本」を使っての稽古となる。

今回も、
劇団メンバーの手作りによる台本なのだが、
「業者さんに発注したんじゃないの?」
ってくらい完成度の高い
製本技術を駆使してくれまして、
オレンジ色の表紙の真新しい台本が完成した。

朝早くから作業を行ってくれた千秋ちゃん、ゆみさん、
そしてかなり早い時間に稽古場に集まってくれた
各メンバーの皆さん、どうもお疲れ様でした。
おかげ様で、今回も素敵な台本が完成しました。

ということで、本日より
出来立てのホヤホヤの「台本」を
用いての稽古となるわけで、
稽古開始前、まずは「台本授与式」から。

劇団ふぁんハウスでは、
十数年前からかな?
製本された台本が完成したら、
「台本授与式」なるものを行っている。

演出席に積み上げられた
ピカピカの「台本」を、
アマティアズのピアノ演奏をバックに
出演者ひとりひとりに
私から出演者に手渡すのだが、
その際、
私は出演者一人一人の目を見て、
「頑張ろう!」「よろしくお願いします」
って声を掛ける。

これから本番に向けての稽古期間、
メンバー達も私も、
楽しいことばかりではなく、
苦しい時もたくさんあるはず。
色々な事に悩んで悩んで、もがいて、苦しんで、
精神的にも肉体的にも、
「もうだめだ」って弱音を吐きたくなる
瞬間もあるかもしれない。

そんな時、台本を開けば、
何か解決の糸口が見つかるかもしれない。

台本って役者にとって、
とっても大切な大切なものなんだと、
私は思っているのです。

そんな意味合いも込めて、
私は「台本授与式」ってのを
行っているのだ。

今の時代、何でもかんでも
ペーパーレスとなってきているけれど、
台本は役者にとっては命!
予算がかかろうとも、
製本されたものにこだわり続けたい。

だからね台本を床に放り投げたり、
折り曲げたり、すっごく雑に扱われると、
なんだか悲しくなるのです。

「作者の魂が宿っている」
と思って、大切に扱って欲しい。

台本を大切に扱えば
芝居が上手くなるかどうかは分からないが、
そういう精神論にこだわるのも
劇団ふぁんハウスの特徴なのです。

この台本に書き込みが沢山増えて、
ボロボロに使い込まれた頃、本番を迎える。

今回もお客様に楽しんでいただける
お芝居を創りましょうね。


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