Page11 –「ようこそTさん!」

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団長の独り言 2023.11.25

11月25日(土)
「ようこそTさん!」

2019年1月5日、
劇団ふぁんハウス第35回公演
「夢めぐり・板橋公演」
を終えて暫くたったある日、

初めて劇団ふぁんハウスの公演を
御覧になったTさんから、
長文のアンケートメールをいただいた。

芝居全体としては、
いい評価をしてくださってはいたが、
御覧になった場面場面に応じて、
作者の私からすれば、
かなり耳の痛いご指摘も、
箇条書きでいくつか綴られていた。

しかしその内容は
「確かにそうだよなぁ」というものばかりで、
全て私は納得したし、それより何より、
「夢めぐり」という作品を
気に入っていただけたからこその
指摘だというのはすっごく伝わってきたので、
Tさんの指摘はすんなり心の中に入ってきた。

きっとこの方は「演劇」ってものが
大好きなんだろうなぁ~ってのも
文章を読ませていただいて感じた。

ちょうどその感想を頂戴した時、
私はというと、次回作
「明日への旅路」の脚本がほぼ完成した頃で、

ただ完成はしたはいいけれど、
「こんな作品で大丈夫かなぁ?」
っていう、いつもの自信のなさと
不安な気持ちでいっぱいの時だった。

そんなタイミングでの
Tさんからの素晴らしいアンケート。

私は、
出演者にすら発表していない「新作」の脚本を、
Tさんに読んでいただき、

「全体の感想、矛盾点、疑問点、修正点等を
教えてもらいたい!」

という願望が沸々と湧いてきた。

でもなぁ・・・
苦労して苦労してようやく完成させた作品なだけに、
全てを否定されたら立ち直れないかもしれない。

そもそもそんな大切な事を、
見ず知らずの方にお願いする作者ってのは
多分いないと思うし・・・。

すこーし躊躇したけれど、
それでも意見や感想を聞きたくなるほど
Tさんの芝居を観る目というのは
素晴らしいものがあると、
アンケートを読ませていただき感じたので、

一か八かまずはメールにてその旨をお伝えすると、
数日後、Tさんから「こんな私でよろしければ・・・」
というとても丁寧なお返事をちょうだいしたので、
メールに書かれた住所に、
完成したばかり脚本をプリントアウトしたものを
郵送にてお送りした。

数日後、お送りした脚本をコピーしたものに、
いくつものマークや線で記が付けられていて、
的確なコメントや疑問点の書き込みと、
別紙に書かれた感想等が送られてきた。

T寧に、そしてとっても真剣に、
何度も何度も脚本を読み込まれたってのが、
その形跡からもよーく分かる。

「どんな方なんだろうか?」

私はどうしても直接お会いして、
もっともっとこの作品についての
感想等をお聞きしたくなり、
後日、Tさんの御自宅近くの喫茶にて
お会いする事に。

最初こそお互い緊張したけれど、

「どうして
こんな脚本を描こうと思われたのか?」等の
質問を受けつつ、話は私がこれまで
歩んできた役者人生の話にまで至り、
やがては演劇全般の話へと移り、

「初めまして」なのに、
約2時間もコーヒー一杯で
その喫茶店で話し込んでいた。

それ以来、1年に1度、
次回作の脚本が完成したら、
まずはTさんに新しい脚本をお送りして、
全体の感想、矛盾点、疑問点等を
指摘していただくという事を
お願いし続けている。

本当に丁寧に丁寧に読んでいただいていて、
私も含め、出演者全員がまるで気づかなかった
「矛盾点」を指摘して下さったり、
作者の私ですら考えもしなかった物語上の解釈を、
キチンと分かりやすく解説して下さったりと、
毎回、すごく助けていただいている。

それなのに実際に直接お会いしたのは、
最初の時と、「久美・美容室物語」の脚本が
完成した時の2回だけ。

あとはメールでのやり取りのみだったのだが、
今回、ついに稽古場へお越しいただく事が
実現したのだ。

Tさんは、
35回公演から一番最近の43回公演まで、
全ての公演を御覧になっていて、
ありがたい感想も
毎回キチンと書いて下さっている。

その感想文は、
反省会でメンバー全員に紹介しているし、
もちろん!脚本をチェックして下さった
「ごもっとも」な内容も、
必ず出演者全員で議論をしているので、
メンバー達は
Tさんの「芝居を観る鋭い目」は知っている。

そのTさんが稽古場へ来られた!
かなり緊張しているメンバー達との
雑談もそこそこに、早速幕開きのシーンから
順を追って稽古をしていくと、

セリフはとちりまくる・・・
動きがロボット・・・
「ザ!お芝居」をしている者・・・

とてもとても人様にお見せできる
代物ではないほど大変な芝居の
オンパレードだったのだが、

Tさんは約3時間の稽古中、
真剣な眼差しでメモを取りながら
御覧になっていた。

稽古終了後、「どうですか?」と聞けば、
気になる箇所のご指摘は2、3あったものの、

「文章だけでは分からなかったところが、
立体的になると『なるほど!』って思えて、
すごく面白いです!」

とのご感想を聞いてホッ!とする。

そのTさん、
稽古終了後の挨拶の時に、
こんな事を言って下さった。

「初めてふぁんハウスの芝居を観た時、
こんな素敵なお話なのに、
客席で寝ているお客様がいて、
それがすごく悔しくて、
だからこそ劇団ふぁんハウスには、
もっともっと
良くなって欲しいって思いました。」

と。

Tさんの話を聞き、
みなの気持ちを引き締めたのは
言うまでもない。

Tさん、また稽古場に来てくださいね。
こんな劇団ふぁんハウスですが、
これからもよろしくお願い致します。


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