Page2–「ゴドーを待ちながら」

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団長の独り言 2024.4.14

「ゴドーを待ちながら」

3月30日(土)に
演劇基礎教室を開催したのは
前回お伝えしたけれど、

その時に用いたテキストが、
サミュエル・ベケットの
「ゴドーを待ちながら」。

「ゴドーを待ちながら」は、
1952年に描かれた作品で、
二人のホームレスが大きな木の下で、
わけの分からない会話をしながら
「ゴドー」という人物を待っている。

「二人」以外にも他に二人と一人が、
ちょろっと登場するけれど、
こちらも会話が全然噛み合っていなくて、
物語の進展も何もなくて、
1幕も2幕も、ひたすら「ゴドー」ってものを
待っているという「不条理劇」の代表作。

20代の頃から、名前くらいは
知っていましたよ・・・一応ね。

「不条理劇を理解してこそ演劇だ!」
みたいな事を言う、理屈っぽい
演劇関係者の方々のささやきが、
あちらこちらで聞こえて来ていたので、

とりあえず知ったかぶりでもするか!
って脚本をチラ見した事もあったけれど、
理解しようとすればするほど、
頭がゴチャゴチャになる・・・

なんでこんなモノを演劇人達は議論して、
演じたがるのか?
まるで理解出来なかったし、
また理解する必要もないだろうなぁー
と思っていた。

そんな私が何故に今回の演劇教室で
ゴドーを???ってところなんだけれど、
ここ数年、劇団での稽古と言えば、
ずっと本公演の稽古に追われていたので、
せっかく「演劇教室」を行う機会に
恵まれたんだし、どうせならば、
ぜぇ~~たいに劇団ふぁんハウスでは
上演しないであろう作品を
平野恒雄が演出したら、
どんなものになるんだろうか?
ってことに興味が湧き、
「だったらゴドーでしょう」という事で、
「ゴドーを待ちながら」を使って
みんなと共に実験をすることにした。

アマゾンで脚本を購入し、
久々に読んでみたけれど・・・

「だからなんやねん!」

って突っ込みを入れたくなるセリフの
やり取りばかりで、結局そのまま
物語は終わってしまう・・・。
わかっちゃいたけれど、
なんだかモヤモヤが残った。

そこでネットを駆使して、
とにかく「ゴドーを待ちながら」について
描かれているモノを手当たり次第読み漁り、
上演された数々の動画も観て、
なんとなぁ~く理解出来たような
気がしてきたところで、
参加者の皆さんと共に
やってみる事にしたはいいけれど、
「ゴドー」は読んだことも観た事も
ない人達ばかり。

正直、演劇を行う集団の長としては、
一人くらい
「私にとってのバイブルです!」
と目を輝かせてくれる人がいてもいいかな?
くらい思ったけれど・・・

まぁーでもそうだよなぁ。
「ゴドー」をバイブルとしている人は
劇団ふぁんハウスで芝居をやろうなんて
思わないもんね。

そんな事を想いながら、
あらかじめテキストを用意しておいた
主人公のホームレス二人のところに、

「少年」がやってくる場面を
3人一組になって演じてもらう。

まずは読み合わせから。
最初は皆さん首をかしげながら、
とりあえず声を張り上げ、泣き、驚く
芝居を演じていたが、
どうもしっくりこない。

しかし、何度か繰り返していると、
その噛み合わないセリフのやり取りが、
滑稽に見えてきて、何故か
「ドラマ性」を感じるようになり、
その上、
それぞれチームの個性が出ていて、
同じテキストを使用しているにも関わらず、
各チームが
全然違った芝居を行っているかのようで、
知らず知らずのうちに引き込まれていく。

そこで私ものってきて、自分が持っている
付焼刃の「ゴドー」の知識と解釈を用いて、
ダメを出していくと、皆の芝居は
益々いい感じ?になってきたので、

今度はその読み合わせに動きを付け、
さらにピアノのアマティアズと、
ヴァイオリンのカブちゃんに、
「ここのセリフのあと、情緒的な曲!」
「この間で、泣くようなヴァイオリン!」

と、わけのわからない私の注文にも
拍車がかかれば、
演奏者のお二人は、
摩訶不思議な演奏で芝居を
盛り上げてくれるから大したものだ。

そして最後は仕上げとして、
稽古場にある
緞帳幕付きのステージに上がり、
稽古場備え付けの照明を使い、
ライティングも施し、

さぁーお待ちかね!
「ミニミニ発表会」を
各チームに披露してもらうと、
読み合わせの時に首をひねりながら
行っていた芝居はどこへやら!

「不条理劇は任せとけ役者」
のように、堂々と
噛み合わないセリフのやりとり。
その矛盾さが意味を成し、
面白い「ゴドーを待ちながら」を
完成させることが出来た!!

最初はどうなる事かと思ったけれど、
さすが何十年間にも渡り
全世界で上演されている
作品なだけはある。

意味不明ながらも、
その意味不明の中にある意味が
私もみんなもちょっぴり理解出来て、
ちょっぴり演劇人気取りの出来た
実りある演劇教室でした。


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