Page12 –「仕込みの日」

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団長の独り言 2022.10.19

「仕込みの日」

10月19日(水)朝6時半。
埼玉県某所の劇団倉庫に、
十数名のメンバーが笑顔で集まり、
大道具やソファー、テーブル等の積み込み開始。

気温は16度か17度かそのくらいで、
じっとしていても、特に暑くもなく寒くもなく
青空の広がるいい天気。

第41回公演「久美・美容室物語 板橋公演」の
本番初日を明日に控え、この日劇場入りだ。

いつもの劇団ふぁんハウス公演は、
真夏か真冬に行うので、
早朝の倉庫での積み込みの時ってのは、
暑いか寒いかのどちらかなのに、
今回は1年で一番過ごしやすい
時期の公演とあって、着るものも
ちょっと悩んだけれど、
いいねぇー秋の公演って。

2月に赤坂で行った
「久美・美容室物語」が終了して以来、
倉庫に眠っていた道具類達が
また日の目を見るときがやってきた。
全員で手分けしながら蔵出しをして、
わいわい言いながらの積み込み作業だ。

約2時間後、2トンワイドロングの
箱車トラックの荷台は満載状態となり、
劇団ふぁんハウスの「夢」がいっぱい詰まった
トラックは倉庫を出発。

そのトラックを
拍手して一礼しながら皆で見送り、
メンバー達も平野カーと千秋カーに分乗して、
夢舞台となる板橋区立文化会館へ。

平日の都心の大渋滞を抜け、
約1時間15分掛けて劇場に到着すると、
間もなくして各スタッフさんもやってきたので、
劇場に入れる時間まで、
搬入口前でみんなで楽しく雑談タイム。

そして午前9時
「かいもぉ〜ん!!」

雪崩を打つように全員が楽屋口より
劇場へと吸い込まれ、
各セクションに分かれ、搬入・仕込みの開始だ!
ガラーンとした
何もない舞台に道具類が運び込まれて、
照明機材の吊り込み、
大きな音響操作盤とスピーカーの設置、
プロのスタッフさんとメンバーが
入り混じりながら様々な作業を行い、
久美・美容室が形になっていく。

一方のロビーでは、メンバー達による
受付周りのセッティングと、
楽屋ではパンフにチラシを折り込む作業が進む。
みーんなどこか楽しそうだね。

高橋舞台監督の指揮のもと、
舞台面の仕込みは順調に進み、
劇団メンバー達によるロビーのセッティングや
楽屋作業も問題なくはかどり、
各ポジションごとに昼食休憩を1時間取り、
小休止も挟みつつ、劇場全体が、
劇団ふぁんハウス色に染まっていく。

私はと言えば、
まり恵さん(萱場まり恵)とともに、
プロジェクターの設置。
これが意外と手間取った・・・。

当初予定していた場所での投影が、
電源が取れないとか、
照明機材の邪魔をしてしまうとか・・・
何かと問題点があり、
プロジェクターとパソコンを手に
2人でウロウロして、「よっしゃ!」
と思う場所をようやく発見したので、
そこから投影するが・・・

何せ舞台上では、
照明さんも大道具さんも明るい中で
作業を行っているので、
「場内を暗くしてちょーだい!」
「紗幕を降ろしてちょーだい!」
って言える雰囲気ではない。
(紗幕・・・細かい目の網状の幕で、
今回、プロジェクターからの文字を投影する予定)

そこで私とまり恵さんは、
皆さんの邪魔をしないように工夫と勘で、
投影する文字の調整作業を行う。

そんな私達の姿に気づいた
舞台監督の高橋さんが、
「紗幕、ある程度まで下ろしましょうか?」
って、ありがたい事を言って下さったので、
お言葉に甘えまして、紗幕を途中まで下ろしていただき、
そこに文字を映し、文字の角度、傾き、大きさを
ミリ単位で調整、一応上手くいきそうだけどねぇ・・・
実際の照明とセットの中で、
果たしてちゃんと映るかどうか?
ちょいと不安を残しつつ、
プロジェクターの出番となる
数時間後に行われる
場当たりの時を待つことにした。

そこうこうしていると、
美術の三井優子さんが考案、制作して下さった
とても素敵な舞台セット建ちあがり、
照明の吊り込みも完成したので、
今度は各道具類(ソファーセットやテーブル等)の
位置決め作業。

ここから私は仕込みの作業を行う
劇団メンバーから演出家に変身し、
客席に降りて、舞台上に並ぶソファー等の位置を
「あと5寸上手〜」とか、
あーだとかこーだとか、舞台セットとのバランスを
見ながら指示を出し、尚且つ役者の動きの
邪魔にならないような場所への微調整を行うと、
その舞台セットの位置に合わせて、
照明さんが明かり当ての調整をしてくれる。

そして照明さんのシュート(色合いを決める作業)、
音響さんのサウンドチェック等を経て、
午後6時30分、場当たりが始まる。
(場面ごとに照明、音響、役者が入っての
場面変化の具合やきっかけを合わせる作業)

この場当たりという作業は、
実際の舞台セットを使って、照明の明るさ、
音響のバランス、それら全てのタイミングを
計る確認作業なので、稽古場では絶対に出来ない。

照明や音響が演出の希望通りなのか?
各セクションの場面転換がスムーズにいくのか?等
を細かくチェックしていくので、
当然ながら、
この場当たりには相当の神経と時間を使う。

とってもスムーズに進むシーンもあれば、
何度となく修正を施すシーンもあるが、
私の癖をよく把握して下っている
「ザ・平野組」の皆様なので大きな問題もなく、
プロジェクターの文字も、
なんかすごくいい感じで紗幕に浮かび上がり、
午後9時20分、この日の全工程は終了。

明日はいよいよ初日!
心地よい疲れを残し、帰路に就いたのでした。


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