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団長の独り言 2023.05.07

「新しい風が吹く中での稽古スタート」

2月26日に
「人生芸夢〜夢のとおり道〜」を終え、
暫くの劇団ふぁんハウスの活動は
お休みをしておりました。

そのお休みの間に、この「団長の独り言」は、
メンバー達が持ち回りで書いてくれておりまして、

私はといいますと、
来年の1月に上演する事が決まった
新作の執筆活動に勤しんで・・勤しむ・・・
つもりだったのに、あああああ!
なんということだ!

3月、4月となんだか色々とありまして、
新作なんてほとんど描く事が出来なかった・・・
というか、描く作業から
なんとなく逃げていたような気がする。

まいったなぁ?劇場は決まっているし、
日程も決まっているのになぁ・・・。

肝心の脚本がね、どういう方向性で行くか?
全然決まらず苦しみまっ最中。

そんで、あれよあれよでもう5月!
いよいよ
7月15日(土)、16日(日)に開催する、
劇団ふぁんハウス第43回公演
「人生芸夢〜夢のとおり道〜」の稽古が、
6日(土)より始まった。

何名かのメンバーは、それぞれの場所で
何かと顔を合わせてはいたけれど、
稽古場でほぼ全ての出演者が顔を揃えたのは
2月公演以来なので、なんだか照れくさい。

皆さん、元気で何よりだ。

そんな中、
新しい風を吹かせてくれる
新メンバーもいる。
須藤あゆみさん、年齢は18歳。

劇団ふぁんハウスの事はネットで見つけ、
「出演者募集」の欄に目が止まり、
彼女の心はざわめき始め、
劇団ふぁんハウスがアップしている
YouTube動画から、
私の描くこの団長の独り言、
公演のアンケート結果、公演写真等、
そしてSNSと、
何から何まで隅々まで観て、
益々出演したいという想いが募り、
募集年齢が
20歳からとなっているにも関わらず
勇気を出して劇団宛てにメールを
送ってくれたのだが、
その文面からは、
並々ならぬ熱意が伝わってくる。

そこで一度お会いしてみようと思い、
4月29日に稽古場にて
主要メンバーと共に面談を行った。

ご本人の写真も、
プロフィールも何も貰っていないし、
どんな子で、どこに住んでいてとか等も
全く分からないけれど、

メールをくれた文面の丁寧さで、
彼女の人となりが
なんとなく伝わってきたので、
細かい事は会ってから
伺ってみようってことで、
とにもかくにも稽古場に来て貰う事に。

予定時刻のちょっと前に稽古場に行けば、
彼女と劇団メンバーは既に集まっていて、
一通り雑談は済ませていたようで、
何やら楽しげな雰囲気。

「よろしくお願いします」の
彼女の第一声の挨拶を聞き、
具体的な話を聞いてもいないのに、
彼女に充てた役の人物設定が
私の中で動き始める。

でも、一応エチュードという
ちょっとした寸劇を行い、
どの程度お芝居のセンスがあるのか?
も見せてもらうが、第一印象通りの
素直で感性のいい芝居。

「いいですね!では、
5月6日からの稽古に来てくださいね。」

と彼女に伝え、
あとは現在大学生であるって事や、
高校時代に演劇部でバリバリやっていた
話なんかも聞いて、

話の最後に
「あっ!そうだ!そうだ!
ところで、
どちらから通われるんですか?」と、
モノのついでのように聞いてみたら!

「山形です」と言うではないか!

一瞬耳を疑うが気を取り直し、
「あの・・出身地じゃなくて、
今、どちらに住んでいるの?」

と聞き返すも、
「山形です」という返事。

「えっ!???山形って、あの山形県?」
「はい!」
「えええええ!!!!!」

なんと!彼女は毎週末、
山形から東京の劇団ふぁんハウスの
稽古場まで通うというのだ!
もうびっくり!

それほどまで劇団ふぁんハウスで
お芝居をやりたいって、思ってくれている。

「だ、大丈夫なの?」

と、ここからかなり突っ込んで、
親御さんの承諾を得たのか?とか、
土、日稽古終わってどうするの?等
事細かく聴くと、無謀なようで、
キチンと計画を立ててはいるようだし、
彼女の本気さがひしひしと伝わり、
途中で「やっぱり通いきれません」
って言うような子ではないと確信し、
出演して貰う事になった。

こうして新メンバーの
須藤あゆみさんの出演が決まり、
先週の土日より彼女も稽古に参加。

彼女は持ち前の明るさで、
あっという間にみんなと打ち解け、
早速稽古に入ると、
気持ちのいいくらいダメがよく通る。

めちゃめちゃいい感じだったので、
よっしゃ!
これで抜けた「さゆり」役もなんとかなる!
と思っていた週明けの月曜日。
四枝美和さんからメールが届く。

四枝さんは車椅子ユーザーの女性で、
現在大学4年生。

今年の
2月公演の直前くらいだったかな?
劇団ふぁんハウスの事を
ネットだと思うけれど見つけ、

「車椅子ユーザーです。入団できますか?」
というような内容の問い合わせを受けた。

ちょうど公演間近だったので、
「まずは劇団ふぁんハウスの
お芝居を御覧になって、
それで気に入っていただければ、
公演終了後、あらためて連絡下さい。」

というお返事を出したら、
彼女はチケットの予約をネットにて行い、
赤坂の劇場まで一人で来て、
「人生芸夢〜夢のとおり道〜」を
一番前の席で観劇してくれた。

終演後、
お客様へのお見送りでロビーに出た際、
四枝さんの姿を発見したので、
彼女に近寄り、「ようこそ!」とか、
「いかがでしたか?」とか、
確かそんな内容でお声掛けしたら、

「とっても良かったです!」

って、すごくキラキラした目で
答えてくれたので、

翌日、
あらためて彼女宛てに
活動内容の詳細を描いて、

「一度お話を伺わせて下さい」

というメールを出し、
4月8日に
稽古場で彼女との面談を行った。

劇団ふぁんハウスでは、
これまでも何名もの車椅子ユーザーの
メンバー達が大活躍してくれたので、
車椅子の役者が参加するという事に関しては、
それほど特別な感覚はなかったけれど、
ご自宅が結構遠方。

まぁーね、
須藤あゆみさん程の距離ではないにせよ、
稽古終了が21時を過ぎるので、
そんな時間から約2時間くらいかけて、
毎週、電動車椅子で
一人で帰路につくというのは、
ちょいと心配ではあったけれど、

劇場で初めてお会いした時と同じ、
キラキラした目で私の話を聞く彼女と接し、

また相当アクティブに、
これまでも活動しているという話を伺い、
「この子ならば大丈夫」
という想いになり、
芝居のセンスを見るために
簡単なエチュード(寸劇)を行うと、
彼女は奇をてらう事なく自己解放し、
ノリノリで演じる。

これだけの迫力ならば、
電動車椅子の存在を消す迫力ある
芝居を発揮してくれるのは間違いない。

あとは、
本当に毎週通えるかどうか?を
冷静にじっくり考えて、
それで、お返事を下さい
という事にした。

その翌日、彼女からお返事をいただく。

私の話を聞いて、
益々劇団ふぁんハウスの一員になりたい!
という想いが募ったものの、
大学4年生という事で、
就職という事が待ち受ける中、
仕事をしながら芝居に参加できるか?
体力的に大丈夫か?等々・・・
1か月ほど考えてから、
返事をくれるというメールを頂いた。

こういうメールをくれる場合、
大抵は「すみません・・・
やはり今回は、出来そうにありません。
また落ち着いたらぜひ」
みたいなお返事をいただく場合が
圧倒的に多いので、
「やはり難しいかぁ」と推測しつつ、
彼女の参加は私の中で諦めていた。

すると!その1か月後、
「劇団員になりたい!」という
熱いメールが届いたじゃないですか!

ただ、
すでに全てのキャストは揃ってしまい、
新生「人生芸夢」チームが動き出したばかり。

しかし四枝さんはこの1か月間、
それはもうめちゃめちゃ悩んだんだと思う。

それで「よし!」と決意して、
勇気を振り絞って
「劇団ふぁんハウスの劇団員になりたい」
って事を伝えてきてくれた。

そんな想いがすごく分かるだけに、
「今回はキャストが全て決まってしまったので、
スタッフとして参加してください」
というようなことは、
彼女の熱い想いを考えると、
とてもではないが、
そんな返事は出来るはずがない。

彼女からメールを確認した
その日のうちに、
「役を追加する」って事で想いをめぐらす。

ただ・・・事はそう簡単ではない。
一度完成して
大好評の中で幕を下ろした作品に
役を追加するなんてことは、
全体のバランスもあるし、
クオリティーを上げるためにも、
いかにも「役を追加しました」って感じの
モノにはしたくない。

役を追加するからには、
物語の中で重要な役割の人物として
登場してもらいたいけれど、
須藤あゆみさんが参加する事で、
彼女の役柄に合わせて脚本を描き直し、
ようやく新しい脚本が完成し、
先日から稽古が始まったばかり。

そこでまた書き直すとなると、
これはどうしましょう?ってところだが、
もうねぇー
そんなゴチャゴチャ悩んでいる場合じゃない。

大まかな構想しか浮かばない状態の中、
メールを頂いた翌日、
四枝さんにお返事を書いた。

「よくぞ!決心してくれましたね。
2シーンのみですが、
かなりセリフのある重要な役を
やっていだきます」と。

それから数日間、試行錯誤を繰り返し、
本日の日曜日、
彼女演じる「真子」という役を
追加した脚本が完成し、
とりあえず完成した改訂版の脚本を
四枝さんにPDFファイルにして
メールにて送った。

ちなみにこの日は、
四枝さんが稽古場に初参加する日。

つまり彼女は自分が演じる役が
どんな役か稽古場に来る道中で知る事となり、
ほぼ初見状態で「真子」という役を演じた。

当然ながら「真子」に絡む
他のメンバー達にしてみても、
初見でいきなり演じるようなものだったのだが、
いやぁ?自分で言うのもなんだのだが、
「真子」という役が加わった事によって、
「人生芸夢」って芝居が
すっごく良くなったじゃないですか!

稽古場の誰もがそれは実感していた。

それを一番感じたのは、
真子と直接の絡みがある
「香」演じる萱場まり恵さんだと思う。
「香」の幅も広がったもんね。

こうして
若き新しきメンバー達が加わり、
新鮮な風が吹く劇団ふぁんハウスは、
前回とはまるで違う
「人生芸夢〜夢のとおり道〜」
となっていくのでありました。


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