Page24 -繊細な演奏への第1歩(Amatias)

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団長の独り言 2021.08.28

「繊細な演奏への第1歩」 (Amatias)

「団長の独り言」をご愛読の皆さま、
1年半ぶりのご無沙汰です。Amatiasです。
脚本執筆中の団長に代わりまして、
「劇団メンバーによる独り言」という
特別編でお届けしていますが、
今回はAmatiasが担当いたします。

板橋区文化・国際交流財団様の共催の下、
誰も経験したことのないコロナ禍の中で
行われた板橋公演では、このような状況にも関わらず、
多くのお客様にご来場いただき、感謝の気持ちでいっぱいです。

誠にありがとうございました。

1年もの間向き合ってきた
今回の「ざ・クリーンキーパー」は、
台本をいただいたときからテーマ曲を
まず一新しようと思い立ちました。

以前のテーマ曲は、
とにかく快活さを全面に打ち出したものでしたが、
快活さはそのままに実際に掃除をしながら
思わず口ずさんでしまうようなイメージを
表現したかったのです。

ふぁんハウスのそれぞれの作品では、
オリジナル曲が実に様々な形に変化します。

もともとがアップテンポの曲であっても、
時には物悲しげなバラードやオルゴール調などで、
さりげなく役の心情に寄り添って
ピアノも芝居をするといった具合です。

反対に、ゆったりとしたテンポの曲であっても、
ときに情熱的なアレンジを加えたり、
クライマックスでフルコーラスを
ダイナミックに演奏するといったように、
多様に変化が加わっても、
違和感が残らず自然に聞こえるような曲作りも
大切にしている部分です。

ほぼすべての作品のクライマックスで、
BGMの集大成と言っても過言ではない、
フルコーラスでダイナミック且つ繊細さも秘めた
演奏をする場面がよくあります。

ところが即興で雰囲気に合わせて
アレンジを施すことができても、
繊細な演奏というのがとにかく苦手で、
稽古をいくら重ねても、
なかなか自分の思い描いている
イメージを引き出すことができず苦戦しています。

先日、初めての試みとして、
この作品がライブ配信されました。

少しでも劇場の雰囲気に近づけたくて、
部屋の電気を半分にして
ヘッドフォンを付けて観劇しました。

自分たちのお芝居を客観的に観るなんて、
これまでは過去のDVDぐらいしか
ありませんでしたが、

お客様感覚だったのは最初だけで、
気の緩みからくるとちりがちらほら見られたり、
実際に演奏しているときの音よりも
ちょっと荒っぽく聞こえるなぁってことを
感じ始めたのです。

以前から、
「ちょっと雑なところがあるから、
繊細な部分も大事にしたほうがいい」という
ダメ出しを受けることがあります。

とちりが多いことは自分でも自覚しており、
ダメ出しを理解して、なんとか結果につなげようとするも、
そもそも繊細さが足りないというのは、
いったいどういうことなのか?何が原因なのか?
私は突破口を探し出せずにいました。
誰にも相談出来ず、
大学生の頃に教わっていた先生に
相談しに行ったこともありました。

お芝居は当然生モノなので、
そのときそのときの感覚を研ぎ澄ましていくことが
大切だと考えてきた結果が、
自分自身が楽しんで演奏することだと思っていました。

先生は、一度ふぁんハウスの舞台を
観にきてくださったことがあり、

「楽しむ気持ちももちろん大切だけれど、
頭の中に弾こうとしている音を鳴らしたり、
打鍵方法の工夫も考えなければいけないね」

と助言をいただきました。

私ははっとしました。
これまでブラームスやベートーベンといった
情熱的な楽曲が好みだったのもあってか、
強く打鍵してしまう癖がついていたのかも知れません。

この方法は活力溢れるようなシーンでは有効であるが、
その反面、真意に触れる長セリフやBGMだけで
全体を作り上げるシーンでは、
さりげなく音楽でカバーするはずが、
かえって演者を煽ってしまいかねません。

それが優しく語りかけるような
ゆったりとした曲でも、
その癖が知らず知らずのうちに
定着してしまったんだと思います。

毎週日曜日の夜にNHKから放送されている
「クラシック音楽館」は、録画して見返しているほど
お気に入りの番組です。

ほぼコンサートの模様をそのまま流しているので、
このご時世演奏会にもなかなか行かれない代わりに、
繊細な演奏を研究するにはこの番組は本当にためになります。
特にピアノ曲の回では、
実際に弾いてみて「こういうことかぁ」
と肌身で感じることもあるんです。

この癖から完全に脱却するには、
それ相応の時間はかかりそうですが、
心から楽しむ気持ちに加えて、
もっともっと深い部分を考えていかなければなりません。

不安を取り除いて繊細さを引き出す、
これは私にとってもっとも大きな課題です。

間もなく次回公演に向けての
稽古が始まりますが、
楽しみな反面怖さや不安もあるのも事実です。

固定観念にとらわれることなく
新しい要素をうまく取り込みながら、
心に残るような繊細さも兼ね備えた
BGMを生み出していきたいと、
次なる目標に向かって、
気持ちを新たにしているところです。


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