Page17 – 「素晴らしき仲間」

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団長の独り言 2022.01.23

1月23日(日)「素晴らしき仲間」

昼夜稽古が2週目になったけど、
「長いなぁ・・・いやだなー」
という感覚にはならない。

週に2回、13時から21時30分まで
ドップリ芝居と向き合いクタクタになるけれど、
それはそれで、
実は幸せって言えば、幸せなのかもしれない。

それなのに「苦しい」とか「辛い」とか、
よくこの団長の独り言に描くけれど、
それはその時その時に、様々な困難に
ぶち当たって逃げたくなっているから、
なんだか知らないが、
そんな弱音を描いてしまう。

だめですねぇ・・・そんなことでは。

なんだかんだ言っても、
本気で「一生懸命」取り組めるものがあるというのは、
実は幸せなんですよね。
それを肌で感じているから、
23年間も劇団活動を続けているんですよねぇ。

稽古場に行けば、
「真剣」に芝居に取り組むみんながいて、
「久美・美容室物語」をいい作品にしよう!って、
がむしゃらになっている。
同じ目標に向かって、がむしゃらになっている。

そんな我々の「がむしゃら」に賛同して下さる
多くの協力者の方々が、
昨日今日も、稽古場に駆けつけてくれる。

昨日の土曜日は、転換スタッフとして、
参加してくれる右近さんと美帆ちゃんが
18時の「通し稽古」に登場!

二人とも、
前回作品「ざ・クリーンキーパー」で
役者として活躍してくれまして、
今回は舞台スタッフとして参加してくれるとの事。

すでに稽古場に来てはくれていたけれど、
その時はまだ通せる状態じゃなかったので、
今回二人とも
初めて「久美・美容室物語」を「通し」で観る。

もちろん、「お客さん」としての目で
観るのではなく、舞ちゃんが作成した
転換表を真剣に見つめるその眼差しは、
完全に舞台スタッフの目。
頼もしい限り!

肝心の芝居は、まずまずの出来栄え。
「昼の部」の稽古で、結構厳しいダメ出しを
しながら細かく細かく稽古をしたからねぇ・・・。

正直、昼間ガンガンやり過ぎて
みんな疲れてしまったかな?と思ったけれど、
いざ通してみると、集中力を切らす事なく
「おお!いいじゃないですか」
って芝居を見せてくれました。

順調に仕上がっている。
課題を完全にクリアーしたわけじゃないけれど、
後退はしていないのでホッと胸を撫でおろし、
この日の稽古は終了。

翌日曜日。
今日は、まず音声ガイドの収録がある。
そう!
稽古場に「ボイス・エマノン」さんが
やって来たのだ。

勿論、本名ではないけれど、
色々と「ボイス」さんにも事情があるので、
劇団ふぁんハウス名「ボイス・エマノン」さんと
ここでは紹介しておきます。

その「ボイス」さんとの付き合いも、
かれこれ23年になる。

1999年7月に上演した
劇団ふぁんハウス第1回公演
の評判がすこぶる良く、
急きょ9月に追加公演を赤坂区民センターで
行うって事が決まり、それを聞きつけた
朝日、読売、毎日、サンケイ等の
ほとんどの新聞が、劇団ふぁんハウスの
追加公演の事を取り上げて下さり、
今度はその記事を目にした
「おはよう日本」の
ディレクターさんから連絡が入り、
私は番組に生・出演する事になった。

そこでディレクターさんとの
事前打ち合わせとして、出演の数日前、
放送局に出向いた際、同席されていたのが、
番組のメインキャスターのボイスさんだった。

テレビでは何度となく
お顔は拝見していたけれど、
お会いするのは、もちろん初めて。

それなのに、波長が合ったってのかな?
二人はすっかり意気投合し、
番組の打ち合わせもそこそこに、
政治の話から始まり、これまで歩んできた、
全く違ったお互いの人生の軌跡等で、
盛り上がったのを覚えている。

放送日の朝は、
グレードのいい日本交通のハイヤーが
我が家にお迎えに来てくれまして、
生まれて初めてハイヤーに乗り、
生まれて初めてドアサービスなんぞしてもらい、
VIP気分で放送局まで移動。

本番は生放送だったけど、
ボイスさんと
「友達感覚」になっていた私は、
緊張する事もなく、ボイスさんに
うまーくリードしてもらいながら、
「劇団ふぁんハウス特集」は無事終わり、
帰りもハイヤーで送って頂き、
感激したものです。

その後、ボイスさんは、
劇団ふぁんハウス公演にも足を運んで下さり、
メールでのやり取りも数回ほどしてはいたが、
お会いする機会もなく、数年が過ぎていった。

そんなある日、劇団ふぁんハウスで
「音声ガイド」を導入しようという事が決まり、
「じゃーナレーションは誰に?」となった時、
当時ガイド台本を書く担当者が、

「○○○(渋谷にある放送局)のアナウンサーさんのような
しゃべりの出来る方がいればいいんだけどねぇ・・・」

と言った一言で、
私はボイスさんの事を思い浮かべる。
しかし、彼はレギュラー番組を持っていたし、
何よりそんなねぇ・・・いくらなんでも
音声ガイドのナレーションなんて
絶対無理だろう・・・と思いながらも、
ダメ元でお願いしてみたら!

「平野さんの頼みだし!
ボランティアでの参加なら大丈夫!」

と快く引き受けて下さり、

それ以来、何十年にも渡り、
劇団ふぁんハウスの音声ガイドを
担当してくれいる。

今回もそのボイスさんを招いての収録。
稽古場での収録なので、
放送局の防音ばっちりのスタジオと違い、
雑音は入るし、隣の部屋で利用している
団体のドンドンと飛び回る音は響くし、
録音機器もマイクもヘッドフォンも
放送局にあるような高価なモノと違って、
一般向けの普通の代物だし。

プロ中のプロの方に、ナレーションを
読んでいただく環境とは程遠い・・・。

それなのに、ボイスさんは
「このほうが緊張感があっていいわぁー」
と言って下さり、嫌な顔は全く見せず、
雑音がした瞬間、瞬時にナレーションを止め、
1,2秒後に音が止むと、
再び素早く読み始める!
というテクニックを使いながら、
100以上あるトラックを収録するのに、
トチリゼロ!読む速度は一定!
当然ながら聞き取り易!
心地よいナレーションを行ってくれた。

達人は、どんな場所でも
達人技を見せてくれるんですなぁ〜。

例えはやや違うかもしれないが、
「弘法筆を選ばず」
という言葉が脳裏をよぎる。

収録終了後、録音係のアマティーの
チェックが終わるまでの間、恒例の座談会。

コロナ禍前ならば、軽食を摘まみながら、
みんなでワイワイやるのだが、
(夜の収録の場合、居酒屋に移動した事も
何度かあった)

ただこのご時世、
そういった事はご法度なので、
寒いけれど窓全開、ドア全開、お互いが座る間隔も、
「これでもかぁ!」ってくらい開けて、
ボイスさんと私のトークショー?が始まる。

収録に立ち会ったメンバー数名は、
テレビやラジオで大活躍されている
本物のアナウンサーさんがいるから
緊張しているのか?
いつもよりも大人しく、みんなは
聞き役となっていたので、
自然と私とボイスさんの「トークショー」に
なってしまったのだ。

帰り際、お互いに最高の笑顔で肘タッチをして、
ボイスさんを見送る。

ボイスさん、
これからもお互い、元気に頑張りましょうな!
ほんまにありがとうございました!
(素敵なボイスさんの音声ガイドは、
どなたでもご利用出来ますので、
イヤフォン付きFMラジオをご持参のうえ、
劇場へお越し下さい。)

ボイスさんがお帰りになった後、
稽古場には続々とメンバー達が顔を揃える。
我々も気持ちを切り替え、
約1時間半程度、徹底的に抜き稽古を行い、
休憩後、18時開始の「通し稽古」に向けての
準備に入っていると、
舞台監督の高橋さんがお越しになる。

「どーも!お久しぶりです!」
私が最も頼りにしている男の登場だ。

高橋さんとのお付き合いも13年以上かな。
高橋さんが来る前は、何名もの劇団メンバーが
入れ代わり立ち代わり
舞台監督を行っていたのだが、

劇団公演の規模も段々と大きくなり、
そうなると、プロ中のプロの
舞台スタッフさんを仕切る
プロの舞台監督さんが必要となってきて、
竹内の兄貴に相談し、紹介の紹介で
やってきたのが、高橋さんだった。

まず高橋さんが舞台監督になって驚いたのは、
本番前にキチンと2時間以上の
休憩を取ってくれた事。

私がタイムスケジュールを組んでいた頃なんて、
場当たりやゲネやらにかなりの時間を取られて、
昼食休憩すらままならない状態で、
そのまま本番に突入ってのが、
劇団ふぁんハウスの当たり前だったものだから、

「本番前にちゃんと休憩が取れる!」
って事に感動したものだ。

何故に休憩が取れるのかと言えば、
それは劇場入りしてからの高橋さんの
仕切りが素晴らしいからに他ならない。

今では劇場入りしてからは、
全て高橋さんにお任せしているので、
「大道具」兼「制作」兼
「舞台監督」兼「演出」兼「役者」
として、
身体がいくつあっても足らないくらい
動きまわっていた私も、
おかげ様で舞台面に関しては、
ほとんどノータッチでいられる。

舞台美術の三井さんは、
建て込みのプロでもあるし、
三井さんのお知り合いのプロの方もお越しだし、
「大道具被れ」の私がガチ袋を腰に提げ、
ウロウロしても邪魔になるだけ・・・。

だから仕込みの時の私は、
買い物係とか雑用係とか、
あとは場を盛り上げ係に徹している。

そんな頼れる高橋さんが
稽古場にやってくると、「いよいよだな!」
と気持ちも引き締まる。

この日はまずは通し稽古を観ていただき、
その後、舞台転換についての打ち合わせを、
右近さん、舞ちゃんと共に行ったのだが、
やはりさすが!高橋さんは観る箇所が違うわ。

1回見ただけの「通し稽古」なのに、
高橋さんからの指摘の鋭い事!鋭い事!

穏やかで、私の性格や癖を
ちゃんと把握していて、それでいて
舞台美術さん、照明さん、音響さんからの
信頼も厚く、本当にいい舞台監督さんと
出会えたものだとしみじみ思う。

ボランティアスタッフの皆さん、
全ての舞台関係、宣伝関係のスタッフさんとの出会い。
多くの素晴らしいスタッフさん達に支えられている
劇団ふぁんハウスは、本当に幸せものだぁ。

これからも、劇団ふぁんハウスを
よろしくお願い致します。


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