Page15 –「柔軟に脚本変更を」

『団長の独り言』PDFファイル(A4サイズ)
↓ こちらからダウンロードできます。
団長の独り言 2022.11.27

「柔軟に脚本変更を」

ただいま稽古を行っている
「人生芸夢〜夢のとおり道〜」の脚本は、
約23年前に描いたものなので、
かなり時代錯誤な
場面がたーくさん出てきていた。

あの当時はスマホはなかったし、
当然ながらSNSなんてものも無かったので、
情報ってものの入り方が随分違った。

そこで脚本を現在に置き換えて
描き直そうとしていたのだが、
20年前の時代背景だからこその
場面が結構あって、
それを無理に現在に置き換えると、
芝居小屋のメンバー全員が
スマホ生活となるわけで、

20年前では成立していた出来事も、
現在のSNSを活用したら、
あっという間に事実が解明されてしまい、
面白みのない物語になってしまうので、
一か八か時代設定を1998年って事にしてみた。

まぁー一種の時代劇ですわ。
すると何もかもしっくりくるんです。

ただ問題は、
「このお芝居は1998年の物語です」
ってのを
お客様に理解していただかなくてはならない。

そこで、メンバー達と話し合った結果、
芝居の冒頭に、1998年のニュースが
さりげなくラジオから流れているって事にして、
セリフの端々にも、「2月に行われた
長野オリンピックは盛り上がったね〜」
とか、

「自民党が参議院選挙で大敗かぁ・・・
橋本首相が退陣」等の
時事ネタを入れてみる事に。

あとは皆さんの芝居力と、
小道具やら衣裳や髪形なんかで、
20数年前を表現しようと思ってはいるけれど、
お客様が混乱しないようにやらなきゃね。

そういえばこの劇団ふぁんハウスも、
1998年12月、最初の顔合わせを行った。

私からしてみたら
そんな大昔って感覚はないけれど、
こうして客観的事実と照らし合わせると、
色々な出来事があって、あれから随分と
時間が経ったんだなぁ〜と実感する。

そんなわけで、
その部分での脚本の矛盾点は、
なんとかクリアー出来たけれど、

あとね・・・
ずっと私の中でひっかかっている
お芝居の核となる「ある役者」が、
「ある事」で「ある決断」をして、
そしてあーなってこーなって行く・・・
という場面を昨日の稽古で行ってみたのだが・・・。

うーん・・・無理がある。

20年前に同じシーンを同じセリフでやった時は、
全く違和感なかったし、
むしろここで感動すら沸き起こったのに、
なんだろうか?この空気は?
私自身、
実際に演じて違和感がありまくりだったので、
このシーンに出ていないメンバー達全員、
(8名くらい)演出席側に陣取ってもらい、
正面から「観客目線」でじっくり観ての
感想を聞いてみる事にしたら・・・。

「どうだった?」
演じ終えた私は皆さんに恐る恐る尋ねると、
どのメンバーも表情が曇っている。

「あの・・・あまりにも唐突すぎます。」
「団長の芝居が上手いから、なんとなく
ああ、そんなものかなぁ?
って思いそうになるけど・・・
なんかやっぱりおかしい。」
「無理やりって感じです」

全員一致で、かなり手厳しいご意見。

どうして20数年前は、
このセリフで成り立っていたのかなぁ?

ただ20年前も、
このシーンにはかなり苦労したみたい・・・

そもそも一番最初に描いた「人生芸夢」の
オリジナル初号台本には
違うセリフのやり取りが描かれていて、
その後、稽古を繰り返すうちに、
「盛り上がりに欠ける」
と思ったのだろう。

当時も試行錯誤を繰り返し、
ようやく改定版に描かれているセリフに落ち着き、
その脚本で上演をして成功を収めた。

しかし今回、
その大成功を収めた改訂版のセリフで演じてみると、
先ほど描いたとおりの結果。

じゃ〜って事で
改定前の初号台本のセリフでやってみると、
余計間抜けな感じ。

いやはや・・・参りましたねぇ〜。

仕方ないので稽古を中断し、
ここでもみなで意見を出し合っていると、

「Aが言うからおかしい」

って事になり、
じゃー「B」が言ったらどうなるかな?
ってところから、
セリフを「B」バージョンに変更し、
絡む役者の動きやセリフも「B」に合わせて変更して、
何はともあれやってみたら!
いいじゃないですかぁ!
稽古場にいる誰もがそれは感じた。

これはBを演じる〇〇さんの演技力が
あればこそなんだけど、
それにしてもセリフを言う
登場人物を変えただけで、
こんなにも素晴らしいシーンに変わるなんて。

物語に厚みが出たシーンへと生まれ変わり、
気分を良くしての本日、日曜日。

いつものように、
「ダンス」「殺陣」「歌」の稽古を行ったのち、
ついにエンディングに向かう
クライマックスのシーンの稽古を行う。

ほとんどの出演者が登場する
とても賑やかなシーンなのだが、

まずは好きなように演じてもらうと・・・
大勢が出ているものだから、
動きがひっちゃかめっちゃかで、
芝居そのものも全然息が合っていない。

「クリーンキーパー」、
「久美・美容室物語」と
ほぼ変わらぬメンツで演じ続けてきたのに、
どうしたものか?
全然コミュニケーションが取れていない。

登場人物が少人数のシーンでは、
あれほどの感動的な繊細な芝居が出来るのに、
なんじゃこれは?
丁寧にダメを出して行こうと思いきや、
おっと!もう稽古終了の時間と相成ってしまった。
この続きは、週末の土曜日までお預けだ。

クライマックスの大切なシーンだからね。
20年前の記憶を頼ることなく、
全く新しい作品として、
作り上げられればと思うのでありました。


共有: