Page34 –「今回も大成功で、幕を下ろす事が出来ました。」

『団長の独り言』PDFファイル(A4サイズ)
↓ こちらからダウンロードできます。
団長の独り言 2023.02.26

「今回も大成功で、幕を下ろす事が出来ました。」

15時15分、開演45分前。

楽屋で軽い昼食をとっていると、
「開場しましたぁ〜」という
舞台監督の高橋さんの声が楽屋廊下に響き渡る。

客席を映し出すモニターを見ていると、
静まり返っていた客席に、
一人、また一人とお客様が入ってこられる。

何十回も経験しているけれど、
この瞬間を迎えると身が引き締まる。

普段ならば「開場」したあと、
緞帳幕の中では、緊張をほぐすために数名の役者が
セット内で思い思いの方法で緊張をほぐしているのだが、
今回の芝居は、緞帳幕が開いた状態なので舞台面にはいけない。

そのため楽屋や廊下、舞台袖、舞台のうらっかわと、
色々な場所で役者達は、精神統一的な事を行っている。

私はといえば、
化粧前の鏡に映る己の姿を眺めたかと思えば、
動物園のライオンやクマのように
意味もなく廊下をうろうろして、
また楽屋に戻りを繰り返していた。

そして本番5分前。
全員集合しているリハーサル室へ。

どの顔も笑顔!笑顔!いいねぇ!
みんなで円陣を組み、
「稽古通りやろう」「楽しもう」「明るく」
と言葉をかけ、前に出した手を全員で重ね合わせ、
「いくぞ〜」「お〜」の掛け声と共に
各自が舞台袖等へと向かった。

やがて1ベルが鳴り響き、
アマティーのピアノ演奏と共に
前説のお二人が舞台へと向かい初日の幕が開く。

出だしは好調。
みんな落はち着き、完璧な芝居を繰り広げていて、
千秋ちゃん演じる「淳子」の歌も素晴らしく、
お客様の反応もいい。

その調子、その調子。

役者もノリノリで、
明るく楽しい雰囲気を作ってくれていて、
そこへ私演じる「中沢」が杖をつきながら
怪しく登場。

私の中で調子がいいとかどうとか、
そんなことを感じる余裕はなく、
とにかく丁寧に丁寧に、
最初の場面をなんとかこなし、
ホッと一息つきながら楽屋モニターで、
ゆみさん(ますだゆみ)の日本舞踊を眺める。

さすが花柳流の名取さんだけはある。
可憐で華やかで、惚れ惚れする。
きっとお客様も同じ想いで見ているに違いない。

日本舞踊の次、
稽古中何度も何度もダメを出し、
繰り返し稽古した「シーン5」が始まった。

このシーンは、
役者同士のセリフが噛み合わず、
私の意図するようなエネルギーもなかなか出なくて、
散々苦労したシーンだったけれど、
稽古場での通し稽古の時や、数時間前に行ったゲネプロでも
とてもいい感じに仕上がっていたので
安心していたら!!

ある役者のセリフが出てこない!
恐らく舞台上の役者の誰もが
「やばい!」と思っているはず。

その中でもセリフの出てこない役者が
一番焦っているのもモニター越しからよく分かる。

しかし、
舞台上にいない私にはどうする事も出来ないので、
この場面に出ている役者達のフォローに
期待するしかない。

幸いにしてセリフを忘れた役者は、
何か適当なセリフを言いながら芝居を続けていて、
恐らく幾人かのセリフは飛んだかとは思うけれど、
共演者のフォローで、うまく軌道修正が出来て、
セリフの出てこなかった役者も
ミスを引きずる事もなく、いつもどおりの芝居を続け、
やれやれ・・・って思っていると、

別の役者のセリフのトチリが!
この時は芝居が止まりかけたけれど、
それでもなんとか凌ぎ、1幕を終える事が出来たのだが、
ちょっとこれは気持ちを切り替えなきゃ!

休憩中、リハーサル室へ全員集合してもらう。

「ミスの事は忘れよう!
後半は、気持ちを切り替えて楽しもう!
自分を信じて!仲間を信じて!
過ぎた事をいつまでも引きずらない!」

と私はみんなに笑顔で伝え、
再び円陣を組んで「いくぞ〜」「お〜」で
気持ちをひとつにして挑むと、
2幕は素晴らしい集中力で乗り切り、
お客様の温かい声援と拍手の中、
初日は無事幕を下ろす事が出来た。

2月26日(日) 楽日

午前9時、全員客席集合。
昨日の初日は、セリフ忘れという
大きなミスが2度もあったにも関わらず、
アンケート結果はすこぶるよろしくて、
知人に直接感想を聴くも、
「セリフの間違い?全然、分からなかった」
という声ばかりでホッと胸を撫で下ろすが、
それでもミスはミス。

今日はスタッフさんも含め全員9時集合で、
とにもかくにも昨日ミスをしたシーン5をやって、
あとはそれぞれが「やっておきたい」シーンをやって、

舞台監督さんからは、
ラストの大転換の確認もやっておきたいとの事で
転換稽古も行っていると、あっというまに12時30分。

あと45分後のはお客様がお越しになり、
1時間半後に本番となるので、
受付スタッフの皆さんに客席へ集まっていただく。

今回もありがたいことに
両日で20名以上の
ボランティアスタッフさんが
お集りいただいているので、
私から皆様へのお礼とご挨拶を行い、
すっかり劇団ふぁんハウスの恒例になった、
出演者と受付スタッフさんによる
アントニオ猪木のパフォーマンス、
「いち、にー、さん、だぁ〜」を行い、
心をひとつにして楽日の本番を迎えた。

各役者達は、個人的に
「しまった・・・」とか、「くそ〜」って
箇所はあったのかもしれないが、
客観的に観れば、これまでの中で
もっとも素晴らしいパフォーマンスの連続!

私の最後の立ち回りも上手く行って、
最後に「でぃやぁ〜」と袈裟切りをして
正面切ってポーズを決めると、
場内から大きな拍手もいただき、
エンディングでも、
二人の歌姫(鈴木千秋、萱場まり恵)が
客席から代わる代わる登場する度に
拍手をいただけた!

これには、二人とも
テンションあがっただろうなぁ〜。

フィナーレで出演者全員がステージに登場すると、
また大きな拍手が!

客席とステージが一体となり、
大きな手拍子とみんなの笑顔の中、
「人生芸夢〜夢のとおり道〜」は
無事、幕を下ろすことが出来たのでした。

思い起こせば、
「人生芸夢〜夢のとおり道〜」
の稽古を始めたのは昨年の5月だった。

そこから2ケ月間稽古を行い、
途中、「久美・美容室物語 板橋公演」の稽古を経て、
本番を10月21日に終えると休む間もなく、
11月から「人生芸夢〜夢のとおり道〜」の稽古を再開し、
年末年始を挟んで、一気にここまで駆け抜けた。

昨年、スケジュールを組む際、
果たしてそんな事が出来るのだろうか?と
不安はあったのだが、
「諦めない!やれば出来る!」
精神でガムシャラになって活動を続けた結果、
今回も多くのお客様の声援を受け、
大成功で終える事が出来た。

次回は7月15日(土)、16日(日)、
板橋区立文化会館にてグレードアップさせる
「人生芸夢〜夢のとおり道〜」を再上演致します。

劇団設立25周年、
平野恒雄は60歳となりましたが、
まだまだ!「夢」を大切に、
前を向いて劇団ふぁんハウスらしい
お芝居を創り続けてまいりますので、
これからも、劇団ふぁんハウスを
よろしくお願い致します!


共有: