Page18 -「場当たり終了!」

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団長の独り言 2021.07.16-3

「場当たり終了!」

本番初日の朝、成功祈願のお祈りをすませ、
午前10時から昨日の場当たりの続きを行った。

劇団ふぁんハウスでの場当たりの時は、
動きやすい稽古着等でオッケーって事にしている。

しかし休憩後の2幕開演早々のシーンに登場する
私と鈴木千秋は、超早替えがある。
(特に鈴木千秋は数秒間での早替え)

さらに他の役者陣達も、
芝居のクライマックスを終えたあとの大転換中に、
スーツ姿から清掃員のユニフォームへの早替えがある。

この場当たりというのは、
照明さん、音響さん、舞台転換スタッフさんが
メインとなる作業なんだけど、
役者の早替えも場当たりの中で
確認しておく必要がある。

いくら稽古場で行う通し稽古で
早替えが上手くいったとしても、
稽古場と劇場のステージとでは、
当然の事だけどステージそのものの
距離がまるで違うので、舞台上から
早替えを行う楽屋との導線も明るさも、
当たり前だけど全然違う。

だから、この場当たり中に早替えがスムーズに
行えるのかどうか?をキチンと
確認しなきゃいけない。

結構あるんですわ・・・
稽古場では上手く出来ていたのに、
劇場へ来ると早替えが間に合わないってのが・・・。

当然、舞台監督の高橋さんも
そのあたりの事はちゃんと把握しているので、
2幕の幕開き、緞帳前に登場する
「梶山」演じる竹内さん、
その娘「良子」演じる美和の芝居、
そして入れ替わり登場する「坂本」演じる
私・平野恒雄と、「節子」演じる千秋ちゃんの
芝居から開始して、
そのまま千秋ちゃんの「超早替え」を経て、
「役員応接室」の場面へと続けてくれる。

竹内さんと美和のシーンを終え、
私と千秋ちゃんの緞帳幕前の二人芝居。

芝居の確認もさることながら、
Tシャツに綿パン姿からスーツへ早替えの事で
私の頭の中はいっぱい、いっぱい。

芝居もそこそこに、
「じゃーな」と言うセリフを言ってすぐ、
舞台監督さんが介錯(かいしゃく)してくれた
どん帳幕を潜り抜け、舞台袖に準備している
スーツに猛ダッシュで早変わり。

しかし千秋ちゃんの早替えは、私の比ではない!
あっという間に着替えて舞台に登場するのだが、
どうやら上手くいったようだ。

特に問題はないようなのでシーンを進め、
「役員室」が再び「清掃員控室」になって、
それと同時に役者達もスーツ姿から
清掃員のユニフォームに戻るという
大転換の場面まで行く。

「清掃員控室」を「役員控え室」にする時は、
途中の10分間の休憩中に行ったので、
さほど問題はなかったのだが、

ここのシーンでは、
アマティアズが演奏する
1分半のピアノ演奏だけで引っ張りながら、
その間に清掃員役の役者達は衣裳の早替え、
セットも、
物音立てずにスピーディーに大転換!

稽古場では絶対に確認の出来ない作業なので、
こうした時間との戦い!という大転換は、
どの場当たりよりも緊張する。
赤坂公演でも同じ大転換は行ってはいるのだが
劇場が違えば転換の段取りも全然違う。

さて、このシーンでの最初の場当たりは、
役者の着替えは間に合ったけれど、
舞台上の大転換は間に合わず、
問題点を改善すべく、舞台監督さんと私は
色々と改善し再チャレンジしてみたら、
ぐーんと場面転換が早くなり、
念のため3回目もチャレンジしてみたら、
とてもすんなりと
大転換が上手く出来るようになった。

そしてクライマックスのラストシーンの場当たり。
私が照明の土門さんに注文したのは、

「天からまばゆいばかりの光が降り注いだ中で、
出演者全員が希望に満ち溢れた姿で
しっかりと未来を見つめる」

というイメージの照明。

一体、どんな照明になるかな?と
ドキドキしながら客席に座って見ていたら!

スモークを用いて照明の筋を際立たせ
「天から降り注ぐ光」を見事に表してくれて、
「まばゆい光」は「ミニブル」という種類の
照明を舞台の上から客席に向かってバーンって感じで、
目つぶし的に投射!

ゴージャスな照明と、役者の希望に満ち溢れた顏と
アマティアズの力強いピアノ演奏が相まって、
このシーンを観ただけで鳥肌が立ち、
感動して泣きそうになる。

素晴らしいラストシーンで幕が下り、
華々しいフィナーレも順調に進み、
予定どおり場当たりは終了した。

余談だけど、高橋舞台監督になってから早十数年、
初日の朝、楽屋入りして朝食を摂ったり、
舞台上でストレッチをしたり、
各自が思い思いの時間を過ごせる余裕も持たせ、
役者の疲労度を考慮しつつも、ちゃんと予定どおり
場当たりが終わってしまうのは凄いの一言。

大昔、私がスケジュールを立てていた時なんて、
仕込み、場当たり、初日の朝と、
小休止はおろか昼ご飯を食べる暇もないくらい
カツカツだったし、
気力だけで初日の幕を開けていたように思う。

それに比べて高橋さんのナイスなリード!
おかげで我々もゆとりを持って、
最終確認の場となる「ゲネプロ」(リハーサル)、
そして本番へと向かうのでした。


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