Page8 –「一生懸命」

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団長の独り言 2023.11.16

11月12日(日)「一生懸命」

全キャスト揃っての稽古の日々。
芝居を創るうえでは当たり前の事。

しかし、その当たり前が、
すごくありがたく感じる今日この頃。

昔話をちょくちょく持ち出して恐縮だけど、
6、7年前までの劇団ふぁんハウスの稽古って、
なんだか知らないけれど、
稽古を欠席する人や、来たとしても
めちゃめちゃ遅い時間にやってくる人が
そこそこおりまして、
酷い時は出演者の3分の1も
稽古場にいないんて時も度々あった。

出演者の3分の1って…。

正直そんなものは芝居の稽古にならないのだが、
それでもちゃんと来ている人がいるのだし、
「ふぅーっ」て大きく深呼吸をして、
3分の1しかいないからこその
稽古をしよう!と気合を入れ、
明るく!元気に!やっておりました。

出演者に「お忙しい方」が
たくさんいたって事なんだけどね。

「お忙しい」のを重々承知で、
「出ていただいていた」わけだし、
稽古を休まれても、
文句の言いようがなかった。

引きつった笑顔で、
「いいですよぉ」って言うしかなかった。

さすがに本番直前の
通し稽古あたりくらいからは、
全員が揃うようにはなるけれど、
それまでは、
毎回ちゃんと稽古に来ているメンバ?だけで
無理やり稽古をし続けて、
ようやく、よーく休む方々が
稽古に来るようになったはいいけれど、
代役だらけで行ってきた
これまでの稽古はほぼ無駄って感じで、
再度稽古をやり直し・・・。
なんとか辻褄を合わせて本番を迎えて来た。

それに関連して、
これまた昔話で申し訳ないけれど、
かれこれ十年くらい前、私よりも随分と先輩で、
若い頃、プロの現場で
バリバリやっていらした方が、
劇団ふぁんハウス公演に
出演して下さった事があった。

その方は、
出番こそ2シーンだけだったけれど、
渋い芝居をされる方だった。

ただ・・・
その先輩の相方役の女性が忙しい方で、
頻繁に稽古をお休みしていた。

「忙しい」のは、
先刻承知の上で出演してもらっていたし、
そんなメンバーは他にもいたので、
「しゃーない」って思って我慢していたけれど、
ちょくちょく欠席していたものだから、
先輩は「また、休みか!」となり、
いい加減顔色が変わってきた。

もちろん先輩の気持ちはよーくわかる。
よーく分かるが、
相方さんは色々とお忙しい方で、

「稽古に毎回は参加出来ないけれど、
それでもいいですか?」
と言ってこられたのを
承諾した経緯がある。
(役者探しに行き詰まっていたし、
人間的にはいい方だったので・・・)

だから
「稽古を休まないでください!」と
強くはいえない。

板挟みの私は、本番までの間、
先輩のご機嫌をうかがいつつ、
本番が終わるまでは、
あっちに気を遣い、こっちに気を遣いながら、
なんとか作品を成功させた。

その後の公演でも
ちょくちょく休むメンバーはいたし、
それよりも本番1か月前まで
「キャスト」自体決まらないまま、
ずっと稽古をしたって時もあった。

それが今では「本気で芝居をやるぞ」
というメンバー達が定着し、
ここ数作品を通して、
「出演者の3分の1しか稽古場にいない」
なんて訳の分からない状態はなくなり、
みんな揃っての稽古は続く。

そりゃーね、長い稽古期間の間には、
休まなきゃならない事情もあるだろうから、
それはしょうがない。

ただ

「全ての稽古に参加しなくてもいいので、
出演してくれませんか?」

ってな条件を出してまで
出演者を募るのは辞める事にして、
稽古期間も回数も随分と短くして、
誰もが極力稽古を休む事なく、
参加出来るような体制に変えた。

そうなると「演劇教室」を兼ねた
稽古なんてしている場合じゃなくなり、
かなりの勢いで、ガンガンと
ダメを出させてもらっている。

しかし・・・
相変わらず、私の意図するお芝居が
一向に現れない。

今回の芝居は、役の人物の心情を
嘘偽りなく演じてもらいたいのに、
動きが雑で、大袈裟に目をひん剥き、
声をつくり、オーバーアクションで、
すぐ目の前にいる相手に語り掛けているのに、
まるで1キロ先の人に向かって喋るような
声でセリフを言ってしまうかと想えば、
椅子に根が生えたんじゃないか?
ってくらいまるで動かず、
ひたすらセリフだけを言う役者もいて・・・。

今回、私は稽古場で、
色々な役者に対して
何度「お芝居をしない!」
と言うダメを出しただろうか?

役者達は「分かりました」とは言うものの、
癖とは恐ろしいもので、
「お芝居をする癖」はどうしても取れない。

そこで、
「一体この役の人物ってどういう人なのか?」
って事を役者に問いかけて、
一緒に、役の人物の掘り下げ作業を行っていくと、
「形だけのセリフ」が
すこーしだけ変化して、魂が宿り始める。

そもそもが
みんなの「役の掘り下げ」が甘いから、
薄っぺらい芝居になる。
役作りってものをやっているようで、
私からしてみたら全然やっていない。

いずれにしても、
こんな事では時間が足りない。

危機感を覚えた一部のメンバー達が
自主稽古のスケジュールを立てて、
稽古のある日は、出来るだけ
昼間からの自主稽古を行う事にしたようだ。
メンバー同士がコミュニケーションを取れるのは、
とても有意義。

折角、
毎回全員揃っての稽古が出来るわけだし、
とにかく1秒足りとも無駄にせず、
みんなで、「一生懸命」やって、
いい芝居を創り上げないとね!

と思う団長でありました。


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