Page19 -「そして初日へ」

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団長の独り言 2021.07.16-4

「そして初日へ」

12時30分、場当たり全て終了。

ホッと一息ついて昼食タイムを経て、
役者陣はメイクを施し衣裳を着て、
14時開始のゲネプロに備える。

ゲネプロとは、役者もスタッフさんも全て
本番通りに行う最終確認のリハーサルの事。

本番との違いはお客様がいるかいないかだけ。
(ここの違いが一番大きいけれど・・)
だから例え失敗しようとも、芝居を止める事はない。

前日から行ってきた「場当たり」での様々な舞台転換が
キチンと行えるかどうか?試される。

私もこの時からようやく
「演出モード」から「役者モード」へと
頭を切り替える。

いつまでも「演出モード」を引きずっていると、
自分が役者としてキチンと出来るかどうか?の
チェックがおろそかになる。
気持ちを引き締めて、いざゲネプロに挑む。

一方の受付スタッフチームは、
今回も大勢の方がボランティア受付スタッフとして
参加して下さり、皆さんロビーに集合し、
受付リーダー・平野恒士郎のリードの下、
徹底したミーティングを行い、
ご時世ならではの客席の消毒作業に取り掛る。

こうした地道な作業のおかげで、
お客様には安心して観劇していだける。

本当にありがたい。
ロビーでは受付スタッフさんが、
劇場内では舞台関係者と役者達が汗を流し、
劇団ふぁんハウス丸は、
滞りなくお客様をお迎えする準備を整える。

ゲネプロでは大きな問題もなく、
大転換も綿密な打ち合わせの成果が発揮でき、
役者の芝居も安定していた。

ゲネが終わり最終ミーティングを行うべく、
役者、全舞台関係のスタッフさんが一同に客席に集合し、
役者の立場から、音響さん照明さんの立場から、
そして舞台監督の立場からの注意事項や問題点を確認し、
みな本番に向け準備に入った。

私は少し仮眠しようかとも思い、
楽屋の畳の部屋に横になるが・・・
仮眠どころではない。
何するでなく気持ちを落ち着け、
楽屋見舞いのお菓子等をつまみ、
静かに時を待っていると、

「開場しましたぁー」

という高橋さんの声。

客席を映し出すモニターに目をやれば、
お客様がちらり・・・ダメだ・・・勢いはない。

緊急事態宣言下・・・
初日は開演が19時という時間帯もあり、
チケットの売れ行き状況からして、
かなりガラガラなのは予測はしていたが、
いざこうして現実を突きつけられると心が萎えるが、

それでもお客様がお越しいただけるという事と、
色々な困難にぶつかりながらも
無事初日の幕を上げる準備が整ったという事は
ありがたい事。

全力で最高のお芝居をお届けしよう!
と気持ちを奮い立たせ、
本番5分前、緞帳幕の中に全員集合した
みんなと共に円陣を組み、
全員笑顔で各ポジションに分かれる。

1ベル、2ベル、そして本番開始。
アマティアズのピアノ演奏でゆっくりと芝居が始まり、
「稽古通り」に芝居が進行していくと、
芝居を観ているお客様の笑い声が聞こえて来て、
やがて涙を拭うような雰囲気も舞台上にまで伝わってきた。

よし!このままなんとか無事ラストまで
みんな頼むぞー!祈る気持ちで、
最後までなんとか進み、

ラストの例の感動的な

「天からまばゆいばかりの光が降り注いだ中で、
出演者全員が希望に満ち溢れた姿で
しっかりと未来を見つめる」

という明かりになり、やがて暗転すると、
客席から割れんばかりの大拍手が!

「あれ?もしかしてお客様、
結構お越しになっている?」

ちょっと驚く。

そのあと華々しいエンディングを終えて、
一旦舞台が暗くなり、最後の私の挨拶で、
再び明かりがつき、お客様にご挨拶をしようと
舞台上から客席に目をやれば、
コロナ対策で規制された客席以外は、
全ての座席にお客様がいらっしゃる!
つまり「満席」って事。

私は開演の45分前に客席モニターを観てあとは、
お客様の入り状況に左右されないように
モニターで客席状況を確認する事は止めたのだが、
まさかあれから続々とお客様がお越しになり、
蓋を開けてみたら満席だったなんて!

ビックリするやら嬉しいやら、
ただ芝居が間延びしたんじゃないかな?とか、
あとは、「最終通し稽古」で見せてくれた
みんなのテンポのいい完成された芝居が
出来なかった事への悔しさが胸の中にあったけれど、

最後のご挨拶は皆様から暖かい拍手を頂戴し、
袖に置いておいたストップウォッチに目をやれば、
かなりいいテンポで初日は演じる事が出来たようで、
恐る恐る拝見したアンケート結果は、
とってもいい評価のものばかり!

初日の成功にホッ!
と胸をなでおろしたのでありました。


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