Page25 –「久美・美容室物語」その6

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団長の独り言 2022.02.12(その6)

「久美・美容室物語」その6

本番と全く同じタイミングで1ベルが鳴り、
ボイスエマノンさんの場内アナウンスが入り、
そして2ベル、
客席の明かりがゆっくりと消えていくと
アマティアズの演奏が始まり、
ゆっくり緞帳幕が上がる。

役者もスタッフも
「ゲネプロ(リハーサル)」なんて感覚はない。
いい緊張感の中、芝居は始まった。

一番初めに登場する「桃子」役のゆみさん、
声も出ているし、それでいて落ち着いている。

彼女の「第一声」でこの芝居の
出来不出来が決まるとい言っても
過言じゃないくらい
「第一声」ってのはとても大切。

袖にスタンバイしているどの役者も彼女の
第一声を聴いて、
「よし!」って気合を入れた事だと思う。

港区の方限定の公開ゲネプロのため、
満席とまではならないので、
皆さんには、客席の前方のお席に
座っていただく。

後方部分はスチールのカメラさんと、
受付スタッフさんのみ。

私演じる「新田啓介」という男は、
2幕からの登場なので、
開演して間もなくしてから、
そろーっと客席の一番後ろの席に潜り込み、
客席よりみなの芝居を観る。

声も通っているし、
稽古で何度も何度もダメを出してきた
場面も集中していい感じで
演じてくれている。

すっかり観客となり見入っていると、
あっ1幕が終わる!
1幕が終わると休憩に入るので
客席の明かりがつく!
メイクをしている
出演者である私が客席にいると、
そりゃーいくらゲネプロとはいえども、
そりゃーいかんでしょう!

1幕の緞帳幕が下り切る
ギリギリのところで、
素早く後ろの扉から脱出し、
裏手を通ってお客様と会わないように
楽屋へたどり着いた。

2幕が始まり、
私は役者として全神経を集中させ
無我夢中で演じ、その後も皆さん、
ノリノリでキチンと演じている。

そしてスクリーンが下りるシーン。
客席から確認したいところだけど、
私演じる「啓介」はスクリーン前での
芝居があるので、
さすがに客席にはもういけない。

舞台袖にあるモニター画面と、
実際に演じている皆さんを見比べながら、
その瞬間をただ見守るしかないのだが、
舞台袖は緊張感に包まれている。

いよいよその瞬間!
芝居は普通に続いている中、
タイミングを見計らって高橋さんが
スクリーン降下のスイッチを押すと、
客席には聞こえない程度の
モーター音をたてながら、
ゆっくりとスクリーンが下りてきた。

舞台上で芝居を行っている役者達は、
すでにさりげなく舞台の前に出ている。

役者全員が中割幕の前に出たのを
確認したころで中割幕が閉まり、
ある場面になるとBGMが入って
照明が変化し、舞台は暗転。

私の出番となるので、暗転の中、
椅子に見立てたオブジェに腰を下ろし、
ドキドキしながらその瞬間を待つ。

「熱海〜熱海〜」という効果音が、
暗闇の中に響き渡たると、
後ろの中割幕が開くのがわかった。

さぁースクリーンは降りているか!?
後ろチラリを見ると、
おおお!ちゃんと下りています!
何食わぬ顔してスクリーンは下りています。

安心した私にピンスポットがあたったので、
客席に向かい芝居を始めた。

そして芝居はクライマックスに突入し、
華々しいエンディングで芝居は終了。

客席からは、
人数以上の大きさに聞こえる
暖かい拍手!拍手!拍手!

なんとか無事終了!
舞台上から見えるお客様が
皆さん笑顔だったので、
多分・・・多分大丈夫かな?って思えども、
気を抜くわけには参りません。

45分後には、本公演を御覧になる
お客様が入場される時間となる。

公開ゲネを終えた安ど感に浸る暇なく、
客席に集合し、照明さん、音響さん、
舞台スタッフさん、
そして役者へのダメ出しを行い、
赤坂公演の本番の時を待つ。

開演5分前、全員緞帳幕の中に集合。
人数制限をした客席に、
ほぼ満席状態でのお客様が
お越しになっているので、
先程の公開ゲネとは違う客席でのザワザワが、
緞帳幕の中にまで伝わってくる。

全員で円陣を組み、
「いくぞー!おー!」の掛け声と共に
各自が持ち場に向かい、
いよいよ「久美・美容室物語」が始まった。

芝居はミスもなくいい感じで進んで行く。
そんな物語に引き込まれて下さっている
お客様からの笑い声、すすり泣く音が
客席と舞台をひとつにして下さり、
役者はノリノリの芝居を見せてくれて、
例のスクリーンもバッチリ決まり、
エンディングでは曲に合わせて、
客席から大きな手拍子が沸き起こる。

エンディングのリズムに合わせ、
手拍子の中、大声で歌っていると、
「よくぞ今回も開催できたものだ・・・」
という想いが込み上げてきて
グッとくるものがあったけれど、

「今回は絶対に泣かない!
明るく元気に皆様笑顔をお届けしよう!」

って誓っていたので、
この瞬間を思いっきり楽しもうって、
感激しながら私は最高の笑顔で歌いまくった。

今回も公演に至るまで様々な出来事があり、
年が明けてからも感染者の数は減らず、
知人達が公演する予定だったお芝居も、
次から次へと中止に追い込まれる中、
「明日は我が身」と憂鬱になる中、
それでもフェイスシールドにマスク姿で、
検温、消毒・・・寒い中での
こまめな換気を繰り返し稽古を続けてきた。

稽古が始まる度に、
「メンバーで感染者、
濃厚接触者はいないよね?」
ってのを確認するのも日課となりながら、
稽古に励む日々。

しかもその肝心の芝居・・・
稽古を続ければ続けるほど
自信がなくなり、
「脚本に問題あり」とさえ想い悩み、
「もしかして、この作品は失敗!?」
なんてところまで、精神的に
追い詰められもして、
いやはや苦しい日々でした。

でも、今、目の前にいらっしゃるお客様は、
最高の笑顔で、
一生懸命手拍子を送って下さっている。

そんなお客様の笑顔に触れて、
「やってよかった!」って想いと
「成功して良かった!」という想いが
体中を駆け巡る。

カーテンコールでの最後の私のご挨拶も、
前回、前々回のように感極まって
涙で言葉が出なくなる事もなく、

落ち着いて堂々・・・
かどうかは分からないけれど、
皆様にご挨拶が出来たように思う。

終演後、お客様のご理解ご協力の下、
規制退場を行わせていただく中で、
ロビーではソーシャルディスタンスを
取りながらではあるが、
お客様へのご挨拶も出来た。

受付のボランティアスタッフの皆様も、
このコロナ禍の中、大勢が駆けつけ下さり、
新米リーダーの平野美岐を
優しくフォローして下さる中で、
最高の笑顔でハードな業務をこなして下さった。

ただでさえ
臨機応変の連続で大変な受付業務、
その中で「コロナ禍での感染対策」
なんてものも加わり、
それでもお越しいただいた
お客様への対応も素晴らしく、
ただただ感謝しかない。

例年だと、
受付スタッフの方も交えての
「打ち上げ」なるものを開催しているのだが、
そういった「飲み会」が開けないのが
ものすごく残念。

ほら、舞台スタッフの方とは
芝居を創るうえで、
現場や稽古場で何度となく
コミュニケーションを取る事が出来るけれど、

ボランティアの受付スタッフの方とは、
じっくりとお話をする機会がないから、
そこが寂しいところ。

機会を設けて稽古場に集まっていただき、
お菓子と缶コーヒーででもいいから、
「お話会」のようなものを開催しようかな?って
企画しておりますので、
ぜひその際はお集りいただき、
忌憚のないご意見やご指摘、
あとは劇団ふぁんハウスへの感想やご要望等、
お聞かせいただければと思っておりますので、
その節はよろしくお願い致しますね。

何はともあれ、創立24年目の劇団ふぁんハウス
第40回公演「久美・美容室物語」は、
大成功にて幕を下ろすことが出来ました。

次回は板橋区立文化会館にて、
「久美・美容室物語」、
装いも新たにバージョンアップさせて
上演致します。

本来ならば、
7月か8月に開催するのですが
劇場の改修工事の関係で、
次回公演は秋に開催予定です。

初めて御覧いただいても、
何度御覧いただいても、
楽しんでいただけることは間違いございません!

自信を持って、
皆様にお目にかかりたいと思っておりますので、
ぜひともこれからも
劇団ふぁんハウスを御贔屓に、
よろしくお願い申し上げます。

さぁー!これからも、
明るく元気に前に進むぞ!


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