Page17 -「場当たり開始から・・・初日の朝へ」

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団長の独り言 2021.07.16-2

「場当たり開始から・・・初日の朝へ」

朝6時30分、劇団倉庫からスタートした長き一日も、
あっというまに18時30分、
いよいよ場当たり開始の時間となる。

舞台美術の三井さんが考案してくれた都会的センスの光る
素敵な舞台セットが「どうだ!」って感じで立ち上がる。

倉庫での積み込みを経て劇場入りしてからは、
役者達も大道具係や受付スタッフやら小道具係となって
作業していたのだが、「場当たり」からは
心も身体も役者モードに切り替える。

仕込みの中で「場当たり」は、一番緊張する作業だ。
照明や音響が私のイメージ通りになるのか?
各場面転換の際、真っ暗になったステージで
果たして役者達がスムーズに移動出来るのか?
舞台転換スタッフが稽古場で決められた
動きが問題なく出来るのか?等、

稽古場では絶対に出来ない確認作業を行うのだが、
幕開きの一番最初から順を追って
照明、音響効果を絡めて場面転換の箇所を
丁寧に確認していく。

ちなみに劇場に入ってから、
こうしたスタッフさんが絡む作業の総元締めは、
舞台監督の高橋さん。

インカムを付けて、
(マイクの付いた片耳ヘッドフォン)
客席上部に位置する照明の土門さんや、
客席一番後ろに座る音響の野中さんと
やり取りをしながら、役者を絡めての
様々な舞台転換が上手く行くのかどうか?
の指揮をする。

演出の私は、客席の一番後ろから
舞台転換や役者の位置、照明の変化、
音響のレベル等をチェックして、

イメージ通りでない場合は、

「土門さん、
ここはもっと明るく!赤色も強くして!」
「道のシーンは青色を基調に」

「野中君、リバーブをさらに強くしてみて」
「BGMをもっとレベルを上げて欲しい」

「(役者の)○○さん、少し前で喋ってもらえる?」
「舞台転換がまだ遅いなぁ・・
もっとスピィーディ─に出来る?」等々、

様々な要求をその都度、その都度出していく。
出来る限り妥協はしたくない私の事をよーく
理解している平野組のスタッフさんは、

「そりゃー無理ですわぁ」

とは絶対言わない。

舞台美術の三井さんも含め、
平野組のスタッフさんは、
私が心から信頼しているスタッフさん。

高橋さん、土門さん、三井さんとの付き合いは
10年以上だし、野中君とは旗揚げ公演からの
付き合い。

私がやって欲しいことや、
癖から何から何までキチンと
把握してくれているから、本当にありがたい。

このとっても素敵な
プロ集団のスタッフさんは、
スタッフさん同士の連携もバッチリで、
高橋舞台監督を中心にしっくりまとまって、
キチンとスケジュール通りに物事が進み、
タイムスケジュール通り
「1幕」の場当たりが終了し、退館となる。

7月16日(金)初日。

梅雨明けした夏の青空の下、
劇場へ向かう平野カーで流れる音楽は、
もちろん、ハウンドドッグのフォルティシモ。

第1回公演の時から、
初日の朝、劇場へ向かう車で必ず掛ける曲、
しかも爆音で・・・

「激しく、たかぶる、夢を眠らせるな!
あふれる想いを、あきらめはしない」

ここのフレーズを聴くと、
いつも気合が入る。

やがて劇場へ到着。
出演者、スタッフさんは、
すでに開門前の劇場楽屋入口前に
集合しているので、まずは皆さんにご挨拶。

挨拶をしながら、
役者陣で「いない人」はいないか確認するが、
ちゃんと全員集合している。

当たり前のようで当たり前でないからねぇ・・・。
不意な事故、怪我、病気、はたまた謎の失踪!

生身の身体だから色々とある中、
みんなが本番初日にいてくれるって事は
何はともあれ、ありがたい事だ。

朝の時点で、
気温は30度を越えているけれど、
みんな元気。

全員笑顔で楽屋へ入り、
約45分間の準備タイムの後、
まずは舞台上に明治神宮の神様を祭り、
成功祈願から。
(この準備タイムの間に朝食を摂るものや
舞台上でストレッチ&発声練習を行う者、
楽屋で共演者と語り合う者・・・等々、
皆思い思いの時間を過ごす。)

成功祈願では、音楽担当のアマティアズが
神主さんとなり、祝詞を唱え、
それに合わせて皆が二礼に拍手一礼で首を垂れ、
役者も全スタッフさんも心をひとつにして、
成功祈願を行う。

そして10時00分、
昨日の場当たりの続きから行う。

昨日はちゃんとスケジュール通り行えたので、
この日は2幕の幕開けから。

役者の超早替えもあるし、芝居のラスト近くでは
短い時間での大舞台転換もあるし、
芝居成功のカギを握る大事な場当たりが
始まったのでした。


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