Page14 –「さぁ!初日」その3

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団長の独り言 2023.07.15 -3

「さぁ!初日」その3

舞台監督さんが
「開場しまーす」と舞台上で言ったあと、
楽屋に来て、「開場しました」と伝えてくれる。

楽屋に備え付いているモニターに目をやれば、
「待ってました」とばかりのお客様達が、
思い思いのお席を確保されている様子が
映し出される。

私は化粧前に腰掛けメイクを直し、
テーブルに並べられた
楽屋見舞いをいただきながら、
楽屋にいる堀越先輩、たけもっちゃん、
橘田君とたわいもない話をしていると、
私の携帯が鳴る。

なんだろう?と出てみると、
本日お越しになるお客様からだ。

「今、大山駅にいるのですが、
ガイドヘルプの方が
いらっしゃらないのですが・・・」

との事。

これは大変!
すぐさま楽屋にある無線機で
受付の笠松リーダーを呼びその旨伝えると、
大山駅にスタンバイしている
スタッフに連絡して、お待たせした
お客様と合流したとの無線連絡が入り、
その後無事に劇場に到着されたとの
報告を受けてホッとしたけれど、
暑い中、ガイドヘルプのスタッフが
いないというのは、本当に不安な
思いをされた事と思う。

原因は、
ガイドの必要なお客様がたまたま重なり、
対応をしている間に、
その方がお越しになられたという事なのだが、
外部誘導のボランティアさんの数を
もっと増やす等の対応を取らねばと思った。
(ボランティアスタッフさんを
大募集しております!我こそは!と思われる方!
ぜひともご連絡を!)

これは後日談だが、公演終了後、
このお客様へお詫びの連絡を
入れさせていただいたら、

お芝居にとても感動していただいたようで、
熱い感想をアンケートにて頂戴し、
な、なんと!
役者かスタッフとして参加してみたい!
という項目にもチェックを入れて下さっていた。

8月中にはご連絡をさせていただきますので、
よろしくお願い致します。

さて時間はあっという間に過ぎさるもので、
ついに本番5分前となる。

男子楽屋に出演者全員が集合し、
全員で前に手を伸ばし、手の甲を重ね合わせ、
「いくぞ?!」「お?!」と気合を入れて、
それぞれが舞台袖にスタンバイ。

ドキドキ、ドキドキ。
何回経験しても、初日の幕開きの瞬間は、
言葉では言い表す事が出来ないほど緊張する。

客席では、ボイスエマノンさんの
場内アナウンスが流れている。

そのアナウンスが終わり、
暫くすると舞台監督さんが、
インカム越しに「お願いします」と
音響の野中君に合図を出す。

すると前説を行う橘田君、ラムさん(小池さん)が、
楽しげなピアノ演奏に合わせて、
奇妙な踊りを踊りながら、
ピンスポットに照らされて登場。

2人は劇中では漫才コンビの役でもあるので、
その役の人物そのままに、
軽やかな漫才風の語り口で、
「観劇中の注意事項」をお伝えする
パフォーマンスを行い、
お客様からの温かい拍手を受けお辞儀をすると、
仮想ニュースを読むボイスエマノンさんの声が
会場に流れ始め、ニュースに合わせて
客席がゆっくり暗くなり、
いよいよ芝居がスタートした。

幕開きは、
前説を行った2人「ひろし」と「田上」が
漫才の練習をしているところに
「女将」役のみっちゃんが、

「いいわねぇーひろし、
だいぶ間が良くなってきたんじゃないの」

と貫禄たっぷりに入ってくる。

カッコいい〜
みっちゃんの「第一声」でバシッ!と
芝居が引き締まり、
続く役者達も落ち着きながらも
テンポのいい芝居で、
物語をグイグイ引っ張っていく。

役者達が物語の中の登場人物を
楽しみながら演じている空気が、
お客様にも伝わっている様子。

だからと言って気は抜けない。
舞台上で「はちゃけた」芝居をしている役者だが、
楽屋に通ずる廊下ですれ違うと、
その表情はどの役者も真剣そのもの!
冗談を言える雰囲気ではない。

その緊張感が芝居はもちろんの事、
踊り、歌、立ち回り!全てに生かされて、
笑いと涙と大声援の中、
ミスもなく初日は無事終了した。

ロビーにて出演者一同が
お客様へのお見送りをするのが
劇団ふぁんハウスの恒例となっている。

今回はコロナ禍での制限も解除されたので、
お一人、お一人にご来場いただいた
お礼をさせていただいていると、

「良かったわよー」
「もぉー泣いちゃったわー」
といつもの公演以上に声を掛けていただき、
お客様が大変喜んで下さっているのが
直接伝わってきて、中には涙ぐんで
言葉にならない方もいらして、
こちらも思わずもらい泣きしてしまい、
笑いと涙でぐちゃぐちゃになりながら
初日を終えたのだが嬉しい誤算が・・・。

今回、劇中で歌姫が歌った
「夢のとおり道」をCD化して
販売しようという事にしたのだが、
「そんなに売れないだろう」
と遠慮ぎみに数十枚用意していたものが、
あっという間に完売!
明日の楽日の販売分がなくなってしまったのだ。

やむを得ないので、
明日はCDの注文販売を行う事にして、
その段取りを制作陣で手分けして行い、
クタクタの身体を引きずりながら
各自帰路についたのでした。


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