Page17 –「夢の叶う場所」 (ますだゆみ)

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団長の独り言 2023.09.05

「夢の叶う場所」 (ますだゆみ)

9月に入っても暑かったり、
涼しかったり。
いったい今は夏なのか秋なのか。
毎朝空とにらめっこしながら
着ていく服に悩む日々ですが
皆様はいかがお過ごしでしょうか。

今週も公演終了後の特別編として、
団長の平野恒雄に代わり、
「ますだゆみ」
の独り言をお届けいたします。

7月の
「人生芸夢〜夢のとおり道〜板橋公演」は、
お陰様で大好評のうちに幕を下ろし、
現在劇団は稽古休みに入っております。

気持ちの上では緊張感が解け、
生活にも少しゆとりができました。

ですが週末に稽古が無いと、
何か物足りなさを感じてしまい、
そんな時はふと本番の日を思い出します。

いつも全力で支えて下さるスタッフの皆様。
暖かい気持ちでお客様をお迎えくださる
受付ボランティアの皆様。
何より劇場に足をお運びくださったお客様。
又、遠くからでも
劇団ふぁんハウスを応援してくださる
お客様のおかげで、
無事公演を行う事が出来たのだなぁと、
今でも感謝の気持ちでいっぱいになります。

そして思い返すと、
前作「久美・美容室物語」の稽古中、
次の作品についてお話があった日から
ずいぶん長い時間、
この「人生芸夢」と過ごしてきましたが、
今回の公演は私にとって
「多くの夢が叶った」
舞台であったとしみじみ感じます。

元々和物好きな私は
着物を着るお芝居がやりたいなと思い、
長く稽古を続けている日本舞踊も、
いつかお芝居で役立つ時が来るといいなぁ等
と考えていました。

以前参加していたカンパニーでは
和物のお芝居やショーが多く、
稽古場で殺陣の方々がされる立ち回りを見ながら、
そのかっこよさに憧れ、
「いつか自分も機会があればやってみたい!」

なんて大それた夢を抱いていました。

それが・・・。
「次の作品はとある温泉街の芝居小屋が舞台。
歌あり、ダンスあり、殺陣ありの
エンターテイメント満載のお芝居です!」

と、団長からお話を伺った時、
まさに私の夢が沢山詰まったお芝居だ!
と、心躍る気持ちになったのを覚えています。

その時はまだ
自分の役どころがわからなかったので

「もし本番ではやれなくても
絶対稽古には参加しよう!」

と密かに気合を入れておりました!

ところが蓋を開けると!?
高山芸術座の古株女優役。
踊りの場面もあり、立ち回りの場面にも
出させていただける事となりました!

まさかの夢が叶ったわけです!
それはもう内心大喜びでした!

がしかし、
実際やってみると殺陣は型を決めるのが難しく、
自分が思い描く通りにはなかなか出来ません。
やはり一朝一夕にはいかないものです。

踊りは個人的にずっと
お稽古を続けていましたが
今回はその師匠である花柳日夏先生直々に
振りを付けて頂き、
「天城越え」を踊ることになりました。

「先生に頂いた振りで踊る」
これもまた夢のひとつでした!

とは言え、
お手本に踊ってくださった先生の動画と比べると、
情けない程出来ていない自分の姿に落ち込み、
喜びはいつしか苦しみに変わっているのでした。

そんな状況でしたが、
ある日先生から素敵なご提案を頂きました。
ご自身の手拭いをお貸し下さると言うのです!

それは染めるところから
誂えたとても貴重な縮緬手拭いで、
片側の縁が朱色に染められ、
巻手紙のようにさらさらと
文字が描かれている「天城越え」には
ピッタリな小道具です!

このような小道具をお借りするからには、
尚更しっかり踊らなくては!と、
身が引き締まりました。

こうして「人生芸夢」は、
沢山の夢が叶えられる作品となりましたが、
目指す場所までは遠く苦しく、
葛藤を重ねて
何とか完走することが出来ました。

しかし、
自分にとっては満足のいく出来ではなく、
まだまだ修行の道は続いています。

私自身、
一度は芝居から離れた時期もありましたが、
心の中にその「思い」はふつふつと残っていて、
持ち続けた夢はいつか叶う時が来るのだと
再認識できた公演でもありました。

「夢は一度あきらめても良いけど
捨ててはいけない」

以前聞いた言葉をまた思い出しました。

まだいくつか残っている私の中の「思い」。
欲張り過ぎず、でも希望は持って、
新しい明日へと
繋げていきたいと思います。

さて、来年1月の公演では
どんな役と出会えるのか
今から楽しみにしたいと思います。

そして「いつか」の為に努力を惜しまず、
豊かな心で日々を過ごしたいと思います。


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