Page15 -「最終通し稽古」

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団長の独り言 2021.07.11

7月11日(日)「最終通し稽古」

本日、最終通し稽古となる。

最終通し稽古というのは、読んで字の如く、
稽古場で行う「最後の通し稽古」の事。

新メンバー2名が加わった今回の座組として、
これまで数か月間に渡り稽古につぐ稽古を行い、
厳しさと楽しさの中で稽古してきた芝居の
最終確認を行う場なので、
当然ながらいつもの稽古とは、
気持ちの入り方も違うってもの。

稽古場には、海外旅行に行くかのような
大きなトランクをゴロゴロと転がしながら、
集合前から続々とメンバー達が集まる。

全員が体調万全で
顏を揃えてくれるのがまずは嬉しい。

この日ももちろん、
二部屋ぶち抜きの広い部屋なので、
紐とテープを用いて、
本番通りの寸法での仮設舞台セットを作る。

図面を見ながらメジャーを用いて
印をつけていくメンバー達も、すっかり慣れたもので、
およそ30分ほどで仮設舞台セットが完成する。

最終通し稽古開始まで
1時間30分ほどあるので、
昨日の通し稽古ですこーし気になった
「全体の動き」に関する
箇所の抜き稽古を行っていると、

竹内の兄貴から
「なるほど」「確かになぁ」という指摘を受けた。

あまり詳しく描くと、
今回の芝居を初めてご覧になる方への
ネタバレとなるので詳細は控えさせていただくが、
竹内さんが指摘してくれた箇所というのは、
実は「ざ・クリーンキーパー」という
作品の核となるとても大切な場面。

とっても重要な事なのに、
私は「エンターテイメント」を意識しすぎたがあまり、
竹内さん演じる「梶山」の心の変化や、
千秋ちゃん演じる「節子」の「梶山」に対する想い等を、
とても雑に描いてしまっていた。

実はここの場面というのは、
自分で描いた脚本のくせに、前回公演の時から
どこか唐突に事が進んでいくようで、
微かな「違和感」があったのだが、

物語全体としては、その「違和感」は
気にならないくらいの事だったので、
ここは物語の進行をいかに面白く、
そしてエンターテイメントとして見せるか?
って事のほうを重要視して芝居を進めてきた。

しかしその微かな「違和感」は、
竹内さんも当然感じ取っていて、
それでもこれまでは「役者の技量」で
カバーして演じてくれていたのだが、

「最終通し稽古」直前の抜き稽古の時、
その違和感を思い切って言ってくれたのだ。

最初は

「最終通し稽古直前に何を今更・・・」

みたいな雰囲気が、
稽古場全体に広がったのだが、
私は竹内さんが何を言おうとしているのか
真剣に耳を傾ける事にした。

竹内さんって、一見「ぶっきらぼう」な
モノの言い方をするように聞こえるが、
キチンと話を聴けば、ほぼ100パーセントの割合で、
すごく的を射た事を毎回言ってくれるので、
私はどんな時でも、竹内先輩の俳優的感性に
絶対的な信頼を置いている。

今回もきっと竹内さんは、
ギリギリまで遠慮していたのだと思う。

しかし、みなの芝居のクオリティーが
上がればあがるほど、
その「違和感」にどーしても耐えられなくなり、
「あのさぁー」と言って、指摘をしてくれたのだろう。

そんな竹内さんの想いを芝居に活かすべく、
私は、最終通し稽古前ではあるが、
思い切って演出を変更すると、
誰もが「なるほど!」って思い、
その結果、清掃員達の絆がより一層深まり、

これから起こる
ドラマチックな展開へと突き進むのに、
とっても説得力のある芝居へと変化した。

ほんのちょっとしたセリフの追加と、
みなの意識をちょっと変えるだけで、
これほどまでに
芝居の雰囲気が変わるのか!?ってのを痛感。
いやはや・・・さすが竹内先輩。

そして迎えた「最終通し稽古」。
舞台監督の高橋さん、
音響の野中さん、照明の土門さん、
転換スタッフの美鶴さん、ジュヨン君という
全ての舞台スタッフさんが参加する中、
緊張感溢れる稽古場で行う
最後の通し稽古が始まれば、
テンポのいい、最高の芝居を行う事が出来た。

昼食休憩を約1時間とり、
午後の稽古ではスタッフさんから指摘を受けた
「登場の仕方」の微調整や、
照明に絡む立ち位置の確認作業等、
納得がいくまで徹底的に行い、
稽古場での稽古は終了した。

全ての片付けを終え、みなで円陣を組み、
「稽古は終わりましたけど、
これからいよいよ始まります!」
とみなに伝え、

「絶対に今回の公演も成功させるぞ!」
「おー!」

で気持ちをひとつにして、

コロナ禍で振り回されながらも、
ここまでたどり着いた自分達に気合を入れ、
いよいよ本番のステージへと
向かうのでありました。


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